インターネット環境や携帯端末機器の普及が急速に進み、自己表現や人間関係の在り方に大きな影響を与えている。しかし、こうした社会環境に応じた新しい表現技法はまだ創出されていない。内的世界を表現する際には、表現者自身にとって身近なツールや簡便化された表現方法を選択することも、自然な感情表出を促す要因のひとつと言えるだろう。 本研究では、この技法を”i-collage技法"と命名する。 まず予備調査として6名の一般大学生を対象とし、技法導入・実施にあたっての手続き上の問題点を確認し、改良を行った。 次に、本調査を行った。対象は、研究の説明を行い、同意を得られた一般大学生である。まず初めにYG性格検査及び東大式エゴグラムによるパーソナリティ測定、POMS短縮版による気分測定を行った。次に割り当てられた条件の教示を行った。i-collage条件では「これから1週間後にあなたが撮影した写真データによりコラージュ作品を作成してもらいます」、コラージュ群では「これから1週間後にあなたが集めた印刷媒体により、コラージュ作品を作成してもらいます」、統制条件では「1週間後に質問紙への記入をしてもらいたいので、その時に集まってください」であった。1週間後には、i-collage条件・コラージュ条件では作品制作、統制条件では中立的な作業(自習など)を行ってもらった。その際には、前後の気分評定(POMS)を実施した。 その結果、i-collage条件は、コラージュ条件と同程度に気分を肯定的に変容する傾向が見られたが、コーラジュ条件に比べて、作業の負担感や作業時間が少ないという結果が示された。このことより、i-collage制作は、従来型のコラージュ制作と同様の気分効果が見られ、素材費用もかからないことから、簡便な自己表現技法として活用の可能性が示された。
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