研究実績の概要 |
1)目的:本研究は,臨床心理士等に対してWHO版心理的応急処置(PFA: Psychological First Aid, 以下PFAと略記する)に関する研修を実施し,研修の効果を検証することを目的とした。2)方法:①対象:臨床心理士を中心とする専門職,心理学を専攻する大学院生・大学生等220名であった。一回あたりの人数は20~35名であった。②期間:2013年8月から2015年12月。③研修内容:PFA とは被災者を援助するための基本的な方法を示したものであり,Do No Harm(苦痛を与えない方法で行う)という原則に基づき,災害時の実際的な行動方法(例えば,「準備する」「見る」「聞く」「つなぐ」など)を教えるものである。被災者を援助するための基本的な方法,災害時の実際的な関わりの方法について学習するものである。③調査:調査は,研修開始前と研修開始後に同じ内容を2回行った。調査内容は,(A)災害時の対応に関する能力に関する自己評価テスト(8項目),(B)災害時の行動に関する知識テスト(15項目)であった。調査の他に,自由記述式で研修内容に関する意見を求め,研究内容検討の参考とした。3)結果:知識テストと自己評価テストの得点を研修前後で比較した結果,研修前よりも研修後においてそれぞれの得点は有意に高い値を示した。4)考察:研修前後の比較の結果,PFAの研修では,参加者は被災者に対する基本的な関わり方の方法や知識について身につけていることが明らかとなった。また,参加者の自己評価も高まることが明らかとなった。一日4時間以上による体験的学習を含む研修とすることで学習効果が確保できると考えられた。また,特に,ロールプレイが役に立つという意見が多くみられた。そのことから,体験的学習に十分な時間をかけて行うことが有用であると示唆された。
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