研究課題/領域番号 |
25590200
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
島袋 静香 沖縄科学技術大学院大学, 発達神経生物学ユニット, 研究員 (70649798)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ADHD / ペアレンティングプログラム / 児童期 / ニューフォーレストペアレンティングプログラム |
研究概要 |
本研究は、ADHD を持つ児童(6~11 歳)の母親を対象に、ADHD の行動の特徴に焦点を当てた行動修正法(Behavior Management)と母親の心理的健康と機能の向上を目的とした支援プログラムの短期的、また長期的な効果を研究することである。 25年度の主な実績は、海外で開発された支援プログラムの修正である。イギリスで開発されたニューフォーレスト(NFPP)(ADHD に特化した行動支援プログラム)を日本の文化へ適合させた上で導入するため、プログラム内で使用されている遊びの種類や言葉使いを日本人に親しみのあるものに変換する作業を注意深く行った。また、日本人には馴染みの薄い行動療法の概念や理論の合理性については、それらの忠実性を厳守しながら日本人が十分理解し実践出来るよう、新たな修正案を提示し、NFPPの開発者達と丁寧に議論を重ねてプログラムの修正を行っている。英語によるマニュアルを日本語へ翻訳し、日本語訳されたマニュアルを再度英語訳し、開発者による確認作業が行われた。現在もその作業は続けられている。プログラムの効果を測るための尺度には、日本語訳されていない者があり、それらの尺度を本研究の為に日本語訳し、また再度英語に翻訳するとうい作業を行い、尺度の一致性を確認した。 無作為比較化法を用いた調査を行う前に、プログラム全体の内容についての受容性や適切性、効果を測る尺度の有効性を確認するため、ADHD児を持つ19人の母親を対象に11回のセッションで構成されるペアレンティング プログラムを実施した。母親の健康向上を目的とした前半5セッションに対する参加者の反応は非常に良好であり、子どもの行動を改善するための重要な要素であることが予測され、無作為比較化法を用いた研究の重要な予備調査となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進行としては「やや遅れている」との評価だが、本来から計画している無作為比較化調査の研究結果の信頼性を高めるための重要な予備調査を行った。まず、質の高い確実な無作為比較化調査を行うために日本人の保護者に対するペアレンティングプログラム全体の受容性、適合性、有効性を確認するため、pre-and-post調査を実施した。マニュアルの作成においては、NFPPの開発者と丁寧に議論を重ね進めており、ADHD児童の行動を修正するための行動療法の合理性に関して、日本の文化と照らし合わせながら、また日本人の保護者のニーズに合うようにプログラムの修正を行っている。また、海外で開発されたプログラムであるため、日本語のマニュアルを作成するために、英語のマニュアルと日本語に翻訳した後、再度英語に翻訳をし直し、海外のプログラム開発者がその内容を確認する作業を行っている。また、プログラムの効果を測るために使用する尺度は、日本語が存在しない物があるため、本研究のために独自で日本語に訳し、英語に再度バックトランスレーションする作業にも時間を要している。以上の作業のため、計画していた以上に時間がかかっているが、重要なプロセスを経て研究は進められている。
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今後の研究の推進方策 |
研究責任者である島袋の出産のため、研究実施時期の変更等が必要となり、研究を一時停止する。育児休業中は、継続してプログラム実施に向けた準備に使い、島袋の復職に合わせてペアレンティングプログラムを実施し、調査を遂行する。しかしながら、本来計画していた調査を一時中断したために生じる研究期間が短縮されることになる。研究チームでは、研究のペースを上げて行う予定で、研究二年目に計画されている結果分析を急いで行うことにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ペアレンティングプログラムで使用するマニュアルの作成と修正に時間を要したため、25年度の研究計画に十分沿ったものとは言えず、次年度使用額が生じている。26年度の研究の進行においては、研究責任者である島袋が出産のため研究が一時停止されており(復職時期は一年以内を予定)、研究計実施の時期を変更する必要があるため、自ずと、本来計画していた年度使用額にも変更が生じる。しかし、島袋の復職後、ペアレンティングプログラムを実施する予定に変更はなく、研究計画で計上した予算を消化する予定である。 消耗品費の主な使用目的は、参加する多くの母親が仕事の後直接ペアレントプログラムに参加することが多いことを考慮し、飲み物とお菓子の購入に使用する。主な人件費の用途は、ペアレンティングプログラムを実施するにあたり、グループの運営を補助する者、事務を担当する者(パートタイムの人材)を確保するためのに使用する。また、プログラムへ参加する被験者に謝礼金を支払う。その他、本研究はADHD に特化したプログラムとして開発されたNew Forest Parenting Program(NFPP) の一部を導入するため、プログラム開発者達と密に連携し合いながらプログラムの忠実性を保つ必要があるため、定期的に行われるコンサルテーション費用として使用する。
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