ADHDの治療に関する国際的な実践ガイドラインでは、エビデンスに基づく治療法として、薬物療法と、行動療法を含む心理社会的支援からのアプローチが推奨されている。しかし、今日の日本においては、ADHD児童とその家族のための有効な心理社会的支援プログラムが十分な効果検証を経て確立したものとは言い難い。 本研究の目的は、注意欠如・多動性障害(ADHD)に特化したペアレンティングプログラムの開発し、無作為比較化法を用いてその効果を検証することである。無作為比較化研究を開始する前(平成25年)に、パイロット研究、pre- post研究、2度のフォーカスグループ調査を実施した後、慎重にマニュアルの修正および作成を行った。pre- post先行研究では、有意な児童のADHD症状の改善、母親のストレス低下、児童の行動に対する母親の過剰反応の改善が認められた。 本研究で使用している最終版ペアレンティングプログラムは、週1回、2時間、全13回で構成し、第1回目のセッションにオリエンテーションを含めたADHDの基礎知識、続く4回のセッションに母親の心理的健康の向上を目的とした内容、後半6回にADHDに焦点を当てた行動療法を組み合わせた。これまでに31名の母親がプログラムへの参加にエントリーし、2回のグループを実施したが、その内26名の母親(5名が参加を辞退)がプログラムを終了した。現在、第3回目のグループを実施中(13名が参加)であるが、現在までに収集されたデータを基に、児童のADHD症状と関係する行動問題、及び母親のストレスや子育て様式に対するプログラム効果について分析中である。
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