研究概要 |
本研究は、海馬CA3-CA1経路に備わる構造的左右非対称性が、海馬関連ネットワークの構築・維持とその記憶形成機能において果たす役割を明らかにすることが目的である。そのために、海馬CA3-CA1路の構造的左右非対称性を持つ野生型マウスと、左右非対称性を喪失したivマウスとを用いて、各マウスの空間記憶形成機能、海馬と海馬関連ネットワーク内の神経活動を記憶形成過程や刺激呈示からの時系列に沿って検討することにした。 25年度は、ivマウスの空間記憶形成機能、海馬と海馬関連ネットワーク内の神経活動を検討するため、野生型コントロールマウスと、ヘテロ型コントロールマウス、ホモ型ivマウスの記憶機能と記憶課題中や休息中の海馬と海馬関連領域(嗅内皮質、前頭皮質、帯状皮質)の局所集合的な細胞外神経活動(主にLFP)を検討した。記憶課題として、物体探索課題(Save et al., 1992)と聴覚性オドボール課題(Brankack et al., 1996)を用いた。 検討の結果、左右非対称性を喪失したivマウスは、物体探索課題において、他のコントロール群と比べて、活動性が低く、空間認識記憶に障害を示した。また、ivマウスは、聴覚性オドボール課題において、音刺激提示後の海馬θ波の活動が、他のコントロールと異なる様子を示した。 これらのivマウスの記憶障害や神経活動の異常は、海馬機能において、海馬CA3-CA1経路の左右非対称性が重要であることを、動物の行動と海馬の神経活動の2つの側面から示すものである
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