研究課題/領域番号 |
25590211
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
木田 哲夫 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (80419861)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 注意 / 脳磁図 / 視覚 |
研究概要 |
本研究ではヒトの脳活動を非侵襲的に計測することにより注意制御中の脳領域間結合状態の変化を解明することを目的とした。特に、(1)異なる視覚的特徴に注意を向けたときの脳領域間結合状態の変化および(2)異なる感覚系に注意を向けた時の脳領域間結合状態の変化について、時間動態の検証に優れる脳磁場計測を用いて検証することとした。本年度は視覚性注意に焦点を当てて研究を行った。視覚性注意課題遂行中の被験者から脳磁場計測を行い、視覚的特徴への注意制御中の脳領域結合状態を検証した。健康成人を被験者として、全頭型306チャンネル脳磁場計測装置により脳磁場の計測を行った。被験者には脳磁場計測中に視覚性注意課題を行ってもらった。視覚刺激として2種類の視覚的特徴を用いた視覚刺激を被験者の眼前約2メートルの位置に設置したスクリーン上にプロジェクターから提示した。手掛かり刺激と標的刺激を数秒の時間間隔で提示した。被験者は試行毎に異なる手掛かり刺激に指示される内容に基づいて2つのうちのいずれかの視覚的特徴に注意を向け、ボタン押しで反応した。視覚的特徴に注意を向けようとしている期間の脳磁場信号を解析した。まず時間周波数解析を行ったところ、注意制御期間中にアルファー帯域からベータ帯域にかけて脳磁場信号のパワー低下(脱同期化)が認められた。また信号源解析を行ったところ、これらの脱同期化は頭頂葉後部の活動に起因すると推測された。さらに結合状態解析を行ったところ、前頭前野と頭頂連合野の結合強度が増強されることがわかった。以上より注意制御中に脳領域間の結合状態の強度が変化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、脳磁場計測により注意制御中の脳領域間結合状態の変化を解明することである。特に、異なる視覚的特徴に注意を向けたときの脳領域間結合状態の変化および異なる感覚系に注意を向けた時の脳領域間結合状態の変化の2点について、時間動態の検証に優れる脳磁場計測により明らかにすることを目的としている。本年度は、上記2点のうち前者(異なる視覚的特徴に注意を向けたときの脳領域間結合状態の変化)を明らかにすることを目的としたが、この当初の研究目的が達成されたため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、脳磁場計測により注意制御中の脳領域間結合状態の変化を解明することであり、特に、異なる視覚的特徴に注意を向けたときの脳領域間結合状態の変化および異なる感覚系に注意を向けた時の脳領域間結合状態の変化の2点について、時間動態の検証に優れる脳磁場計測を用いて明らかにすることを目的としている。初年度は、前者(異なる視覚的特徴に注意を向けたときの脳領域間結合状態の変化)を検証した。今後は、後者(異なる感覚系に注意を向けた時の脳領域間結合状態の変化)について初年度同様の形で検証を進めて行く予定である。健康成人被験者を対象に、全頭型306チャンネル脳磁場計測装置を用いて、数種類の感覚刺激を用いた注意課題を遂行している際の脳磁場を計測・解析する。これにより感覚系依存的もしくは独立的な注意制御機構、特に脳領域間結合状態の変化について検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は視覚刺激提示システムを購入予定であったが、以前より保有していた視覚刺激提示システムの一部を修理することで研究遂行が可能となったため残額が生じた。また本研究では愛知県の生理学研究所にてデータ計測を行う計画であったため当初は出張旅費および交通費を予算計上していたが、生理学研究所の共同利用機器制度に採択されて旅費および交通費の支給を受けることができたため科研費から支出する必要がなくなった。そのため科研費より支出する予定であった旅費および交通費分に残額が生じた。 上記の結果生じた次年度使用額分は高性能の解析用パソコン(ワークステーション)を購入するために使用する。本研究では大容量のデータを扱っているため、高性能の解析パソコンを導入することによりデータ解析に要する時間を短縮できる。
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