研究実績の概要 |
平成26年度は,平成25年度に実施して取得した感情語のデータの分類作業に時間がかかり,予定した段階には進めなかった。25年度取得したデータ,すなわち全国から様々な年齢層の937人から得られた全般(2255語),ポジティブ感情語(1131語),ネガティブ感情語(1041語),中性語(23語),オノマトペ(422語)を20人の心理学を学ぶ大学院生に感情語と考えられるかどうかの評価を求め,8割以上が感情語としたものを選択し,同義語と思われるものをまとめ49項目の感情語を取り出した。その結果,ポジティヴな感情語が10語(20.4%),ネガティブな感情語が37語(75.5%),その他2語(4.1%)であり,従来主張されてきたネガティブとポジティブな感情語の割合を指示するものとなった。この割合はこの結果が信頼できるものであることが伺われた。当初の目的では,これらの各感情語がどのような文脈で使われるかの調査に移行する予定であったが,諸般の理由もあり(現在までの達成度の項目に記載),26年度中にその調査を行うことが出来なかった。 なお、今年度行った関連研究として、感情を喚起するための感情喚起語リストの作成を行った。これは共同研究の一環として行ったもので、感情語を用いて感情を喚起するリストを作るという目的で行ったものである。この感情喚起感情語リストはBradley達が精力的に作成しているが、翻訳したものは意味合いが異なるため、適切なリストと言えなかった。我々の作った感情語リストは、こうした批判にこたえるもので、快―不快ト覚醒度という2つの次元で構成されるとされる感情の意味空間を9つに細分し、そこに位置する各15語ずつを抽出したものである。近々学会誌に論文として投稿すべく準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度中に手掛けられなかった研究課題、及び当初申請で今年度に行う予定をしていた研究を精力的に行うことを考えている。昨年度達成できなかった理由はもはや解決し、課題遂行の準備もほぼできているため、9月までに昨年度達成できなかった課題のかなりの部分を達成し、続いて今年度の課題に取り組みたいと考えている。 まず,昨年遂行できなかった,感情語の使用場面の収集から始める予定である。この調査は調査会社を通して全国規模での行うことを予定している。呈示する感情語はすでに抽出してあるため,送球にかかることが出来ると考えている。また約250名の感情心理学を研究対象として,抽出した感情語の英訳を求める。続いて研究者があげた英訳をまとめ,日本語への邦訳を求め,両者の対応表を作成する。こうして得られた感情語を使用し,それらの感情語がどのような場面で使用されているのかの自由回答を求める。また逆に,全国調査で得られた使用場面を用いて,その場面で使用する感情語の調査を行う。この2つの結果をあわすことで,仮の感情語時点を作成する。 以上のような方法で得られた感情語とその使用場面の関係のリストを用いてアメリカ,日本での使用場面の比較を行う。ここまでの作業を今年度中に出来ればと考えている。以上の段階が終われば,そのような場面でどの感情語を使用すればよいか,また感情語の外国での使用法と後外が明らかになるものと思われる。 関連研究として,当初から予定した感情語のファジー概念を使用した異同の判定も早急に行う。また昨年度関連する仕事として開始した勘定を喚起する感情語リストを用いたス津ループ実験を,PDとの共同研究として大学生,高齢者を対象として行う予定であり,高齢者の感情のあり方の解明につながるのではないかと期待している。
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