研究課題/領域番号 |
25590212
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
鈴木 直人 同志社大学, 心理学部, 教授 (30094428)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 感情語の抽出 / 全国調査 / 感情語の使用場面 / 感情語のファジー評定 |
研究実績の概要 |
感情語の分類に関するこれまでの研究は2013年度に全国の約900人を対象として行なった感情語の収集を分類することから始めたが,昨年度,学会の開催などの諸理由で,滞っていたものを,再度検討することから再開した。この結果,収集された単語の内,20人の大学院生による評価で80%以上が感情語であると判断し,かつ全国調査で5人以上が感情語として指摘した単語を抽出したところ72の感情語が抽出された。これまで550の感情語があるという報告がみられるが,実際に一般人が感情語と思っている言葉は大幅に少ない可能性があることが分かった。 こうして得られた72の感情語を,どのような場面で使用するのかを書かせる全国調査を,今年度,調査会社に依頼して実施した。調査は全国を11地区に分け,40歳以上(480名),40歳未満(480名)の2群に分けて調査を行った。なお性別は男子593名,女子407名であった。なお,72の単語は4つのグループに分割し地域,年齢の偏りが無いように,すなわち11地区の40歳以上,40歳未満の人数が出来るだけ偏ることが無いように配分した。この結果は,現在それぞれの感情語に対する回答を,回答内容に基づいて分析している最中であり,結果はまだ出ていない。 今年度2回目の調査は,各感情語の意味空間におけるお互いの感情語間の関係を知るために,各感情儀について感情語の意味空間としてよく用いられる円環モデルを用いて,快-不快,覚醒-睡眠の2次元について,ファジー評定を求めた調査である。調査は全国規模(660名)で行い,第1実験と同様,全国を11地区,40歳以上と40歳以下に分割し,以前の調査で得られた72の感情語に,調査では5回以下しか生じなかったが,感情語として扱った方が良いと思われる語を足した90語について,快-不快,覚醒‐睡眠の軸でファジー評定を求めた。この結果も現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の進捗の遅れの大きな原因は,昨年度(2014年)の報告書にも書いたように,昨年度に報告者が日本心理学会の年次大会を本務校で開催し,報告者がその大会委員長を勤めたことによる。この大会は出席者約3,500人の大規模な学会で,この準備などに忙殺され,また大会後は気が抜けたようになってしまい,仕事に専念できなかったことが大きな原因であった。また当学会は心理学会の唯一の公益社団法人であり,その総務担当常務理事として諸用に追われ,自分の研究に時間を割く時間が十分に取れなかったことが挙げられる。昨年1年間の遅れを取り戻すべく今年度の申請にあたり,所定の年度内に研究を終える予定を立てたが,当初計画2年分の内容を1年間で終えることにはやはり無理があり,当初の研究期間内に終えることは出来ず,当初計画の最終年度の研究内容に手をつけるに至らなかった。このため来年度まで研究を延長すべく期間延長願いを提出した次第である。現在,今年度行なった研究のデータ取りまとめ,処理に当たっており,これが完了次第,最終調査に入ることを予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行なった2調査の内,ある感情語をどのような場面で,使用するかに関する調査は,960人の各被験者が17単語に回答をしているため,データ数が多く,各単語に共通した場面をまとめるのに思いのほか時間がかかり,苦慮している。今の予定では7~8月頃には取りまとめ,翻訳を行い,9月頃には海外調査を行うことを予定している。海外の調査は,現在報告者が加入しているISRE (International Society for Research on Emotion,国際感情学会)の会員専用インターネットを介して行なうことを予定している。また,アメリカのBoston CollegeのRussell教授に依頼して学生の調査も行なってもらうことも視野に入れている。調査内容は,日本で得られた各感情語の使用場面,各2~5場面(使用頻度の多い感情語は多くの場面にする)を呈示し,その場面にアメリカでは,特に感情の専門家はどのような感情語を使用するかを調べ,日本での結果と比較を試みるものである。この比較を行なうことで,日本で使われている感情語とアメリカで使われている感情語の対応関係が明らかになるものと思われ,常に疑問としてきた,英語で表現されている単語と日本語を翻訳した感情語が同じ場面を現しているのかどうかについて考察することが出来るものと考えている。この調査の実施に当たっての課題の一つは,インターネットを通じての専門家に対する調査であるため,どれだけの被調査者が参加してくれるか想像がつかないところに問題がある。もし,協力してくれる専門家が少ない場合は,企業の調査会社を利用し,一般人の調査を考えなくてはならないかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究期間の2年目(昨年度)に報告者が大会委員長を勤めた大規模学会を本務校で開催し,その準備に忙殺され,その後も研究を遂行ことが出来なかった。今年度,最終年度に当たり,当初の計画の昨年度の分も含めた,2年度分を実施する計画を立て申請したが,2年度分の研究を同時に行なうという計画事態に無理が有り,当初最終年度に実施する要諦であった研究の実施が出来ず,次年度使用額を生じることになった。大きな理由として,一昨年行なった調査(全国約900名の被調査者が感情語と考える語をポジティブ感情語,ネガティブ感情語,中性の感情語,感情に関するオノマトペ,全体に分類し各分類に最高20単語あげる)のデータ量が極めて膨大であり,その取りまとめに予定よりも多くの時間を要したことが大きな原因である。この分析はほぼ終え,第2次,第3次の調査の実施を行なったが,当初計画の3年次に予定していた研究実施に至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在今年度行なった,感情語を使用する場面のとりまとめを行なっているところである。このとりまとめに基づいて,各感情語を使用する場面を特定する。この際使用頻度の高い感情語に対しては3~5個の使用場面を,出現頻度の少なかった場面1~2程度の場面を抽出することを予定している。得られた使用場面を英語に翻訳し,その場面はどのような感情語の場面であるかを尋ねる海外での調査を行う。このようにしてある一つの感情を表す場面が日本語の感情語では何々で,英語ではどのような単語が使用されるかという対応関係を調べる。この際,国際感情学会の会員に調査を依頼するが,回等が満足に得られなかった場合,企業を介しての調査も視野に入れている。
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