研究課題/領域番号 |
25590218
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 博志 筑波大学, 人間系, 准教授 (80323228)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 教育改革 / 効率性 / 専門的自律性 / 財政再建 / オーストラリア |
研究概要 |
本研究は、財政再建を実現したオーストラリアを対象とし、財政再建が教育改革に与えた影響を検証し、同国における教育改革の構造と原理を解明することを目的とする。オーストラリアはOECD諸国の中で財政状況が健全である。2013年度の財政収支は135億ドル(約1.2兆円)の赤字の見込みである。日本の財政赤字が2013年度末で750兆円程度であることを考えると、非常に健全であり、財政再建の概念にもよるが、いわゆる財政再建は達成されていると言えよう。このようなオーストラリアの教育改革の状況を検討したところ、非常に興味深い結果が分かった。第一に、財政再建が広い意味で達成されているにもかかわらず、あるいは、だからこそ、一層の効率的な教育財政支出が求められていることである。例えば、ビクトリア州教員研修センターは、予算が徐々に削減され、削減分の予算は自力で利益をあげることが求められている。第二に、グローバル経済競争の中で、貢献できる人物の育成が教育改革において求められいる。具体的には、OECDのキー・コンピテンシーに類似の能力が重視されている。第三に、校長の専門職スタンダードの中で、グローバル経済競争が強く意識され、学校のパフォーマンスの向上が求められている。ただし、校長をコントロールするのではなく、校長の専門的自律性を基盤とした認証制度が開発されている。第四に、幼児教育が重視され、その資格の統一化、向上、幼児教育機関の質の保証が実施されている。そのために、新たな独立行政法人が設置、運営されている。このように、効率性や人材育成が求められる一方で、単なる規制強化、あるいは単なる市場原理の導入ではなく、むしろ、校長の専門的自律性が尊重され、かつ幼児教育の充実が図られている。財政再建と教育改革の拡充が同時に追求されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献とデータの収集と検討はもとより、オーストラリア教育行政機関、学校等への訪問調査を行い、相当のデータを収集できた。また、研究成果も、おおむねではあるが、論文としてまとめつつある。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究を推進するために、文献とデータの検討を行うこと、オーストラリアへの訪問調査を行うことを予定している。具体的には、本年4月~7月に、図書、論文、政策文書の検討を行い、オーストラリアの教育改革の展開と課題について、特に財政面に重きを置いて、解明を進める。その上で、疑問点、不明点及び実態を明らかにするために、8月に現地調査を予定している。現地調査では、全国教育政策審議会、教育省、地方教育行政事務所、公立学校(オウバン小学校、メルボルン女子中等学校)の訪問調査を行う。メルボルン大学名誉教授のコールドウエル博士にも面会し、研究の討議を行う。調査の視点は次の通りである。第一に、2014年度において、財政再建の状況、及び、効率的な教育財政支出の動向はどのようになっているか。第二に、2014年度において、グローバル経済競争の中で、どのような能力が児童・生徒に求められいるか。関連して、全国学力テストの動向と課題はどのようになっているか。第三に、2014年度において、校長の専門的自律性を基盤とした認証制度がどのように開発・実施されたか。第四に、2014年度において、幼児教育改革の動向は、どのような成果と課題を持っているか。訪問先では、管理職に対する聞き取り調査とデータ(一次資料等)の収集を進める。帰国後に、調査の結果を整理する。そして、9月以降の期間に、研究成果をまとめる予定である。論文の作成、または学会における発表を予定している。研究成果については、学会などで、オセアニア地域の教育に詳しい他大学の研究者に検討いただき、その助言や指摘にもとづいて、妥当性の向上に努める。このような研究を通して、財政再建を実現したオーストラリアの教育改革の構造と原理を解明することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末(2月)に外国出張を実施したため、厳密な使用額の確定が時間的に難しかったため、高額ではないものの、次年度使用額が生じた。 効率的な予算執行を心がけ、8月に外国出張を行い、早めにその後の研究の推進とそれに伴う予算の執行を行い、年度末には、収支バランスがとれるようにする。
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