研究課題/領域番号 |
25590222
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
的場 正美 東海学園大学, 教育学部, 教授 (40142286)
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研究分担者 |
柴田 好章 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70293272)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 授業分析 / 記述言語 / 転記情報 / 記述形式 / 解釈 / 中間項 / 授業研究 / 参照性 |
研究実績の概要 |
授業研究における授業の解釈は、1)授業の録画・録音記録をもとに文字記録を作成する局面における転記情報など解釈、2)授業記録における発言の意味を理解する局面での解釈、3)概念化する局面での解釈でなされる。本研究は、この3局面における解釈過程を明示化し、記述言語の構築を試みる実験にもとづく理論研究である。 平成26年度の重点研究は、平成25年度の到達目標である転記情報の記号による明示化を基礎に、転記情報などの解釈、意味の解釈及び事例の参照性の関係とそれぞれの機能を、解釈学の視点から理論的に考察することに置いた。これまでの授業研究の事例と具体的な授業記録の分析結果、次のことを解明した。 第1に、発話者、指示語の内容などの転記情報の中で、割り込みや子ども同士の関わりを明示化する記号の解釈と判定には幅があり、その妥当性の検討が必要とされる。第2に、記述形式で使用される記号には、例えば[ ]は事例を示す、〔 〕で示された部分は構想が示されている等、設定された記号の形式には一定の概念づけがなされている。また複数の記号からなる記号の関係は、概念と概念の関係が示されている。第3に、記号の選択と記述形式に解釈者の解釈が明示化されている。第4に、記号形式に概念づけがされているので、発言に明示化されている諸要因を抽出することが可能である。第5に、発言に内在し背後にある諸概念は発言内の前後、前後の発言を解釈して抽出しなければならい。解釈を通して抽出されたそのような概諸概念は『 』で示されている。解釈の特徴の1つは再編集である。さらに別な解釈がなされた場合には、その解釈は再編集される。だからこそ、ある段階で示した解釈を明示する必要がある。第6に、解釈は、情報の圧縮と抽象化を伴うが、常にもとの解釈資料への参照性を必要とする。その参照性は発言番号と分析の手順の明確化によって担保されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各年度ごとに、重点研究と到達目標を掲げている。平成26年度の到達目標は、開発された記号による発言の再構成の形式に解釈がどのように明示されるかを、検証研究と重点研究を通して解明するである。研究実績内容の成果として述べたように、解釈者が授業記録を記号で表現する場合、1)記号の選択と2)記号と記号の関係をどのように定式化するか、3)意味単位を語、語句、文のどの単位に設定するかという形式に解釈者の解釈が明示化されていることを解明した。設定した達成目標が達成されているので、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策と課題は以下のようである。 第1に、国際学会において、転記情報をいくつかのレベルで視覚化する提案を具体事例で示した。この研究を基礎に、今後の研究の推進方策として、1)解釈する資料の視覚化の範囲と程度、そして、2)それらが解釈にどのように影響を与えるかという問題を実証的に検証する。 第2に、事例に則した新しい記号の開発としては、解釈者が想定した概念を、例えば、公共の場合、『公共』という記号で表してきた。概念間の階層と関係を示す記号の開発が課題となってきている。この問題を最終年度には解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の未使用の額は約7万円は外国の授業記録の翻訳に当てる予定であったが、経費がそれ以上であったので、その額を繰り越した。分担者は国際学会での発表を予定していたが、経費が不足したので、その額を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、代表者は、2015年度と合算して旧データをデジタルにする経費と翻訳経費として支出する。研究分担者は合算して国内外の調査旅費と収集した記録のテープ起こし作業経費として支出する。
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備考 |
東海学園大学学術情報リポジトリ
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