本研究は、授業研究における転記情報など解釈(第1場面)、授業記録における発言の意味の解釈(第2場面)、そして概念化の解釈過程(第3場面)を明示化し、記述言語の構築を試みる実験にもとづく理論研究である。その研究のために5つの課題を解明することである。 平成27年度では、重点研究として、新しく開発した記号を含め記号全体の記述形式の論理的関係の考察を行った。大きくは、記述された発言(第1と第2の場面)の解釈のための記号と概念化のために解釈者が投入した記号に分類される。前者は、概念、構想、例示、論理関係、限定など発言の論理的関係を表す記号とある人物への肯定、否定、疑問、ある自分のイメージなど人物と人物の関係を表す記号がある。後者は特定の発言の背後に想定される概念を表す記号、発言と発言を関連づけて導かれる概念を表す記号である。これらは解釈者が投入した記号として『 』で表記した。これらの成果は日本教師教育学会、日本教育方法学会で公表した。 検証研究として、再現性、可逆性、論理的関係から発言の解釈を記号の形式に明示化する妥当性を総合的に検証した。その結果、事例、概念、構想など基本的な記号や論理的関係、基本的記号の変化や変容を表す記号は再現性が高いが、基本的記号の同一(=)、差異(≠)を表す記号は数学的意味と相違があり、再現性の幅が大きいことが分かった。 達成目標のために研究として非言語活動の記述可能性と教育理論における概念の再概念化の可能性を考察した。前者の可能性は非言語の言語記述を記号を使用して記述することで非言語活動の解釈が明示化されることが分かった。後者の再概念化は到達できなかった。
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