本研究の目的は、日本でも実践の広がりを見せているオルタナティブ教育をはじめ、多様な学びの場について、子どもの学習権の保障や教育の公共性の観点から、その制度化の意義と課題を明らかにすることにある。 国内の「オルタナティブ教育の制度化」に関する立法化の動きにも合わせながら、本研究課題の先進事例を積み重ねてきた韓国へのフィールドワークや、国内のオルタナティブな学びの実践の現場関係者からの聴き取りと意見交換をもとに、子どもの権利条約が提示する子どもの権利の視点から分析・考察を行った。 日本における学校外の多様な学びの実践の保障へ向ける動向に関して、次のような論点が浮かびあがってくる。1つは、不登校の子どもおよび保護者の救済の側面である。2つには、不登校の子どもたちが追い詰められていく要因のひとつでもある学校復帰施策に顕れている学校至上主義である。3つには、したがって、学校外の学びについては、1つ目の救済の側面からはやむをえないとして「特例」的に認めるにしても、オルタナティブは認めない、という発想とそれに依拠した動きが表面化している。 ここで1994年に日本政府も批准した子どもの権利条約を基にすると、子どもの学ぶ権利の行使という視点から、学校外の「多様な学び」の場が公認されていくことが、本来のオルタ^ナティブ教育の法制化につながるとともに、子どもの学習権を保障していくことにつながっていくと言える。 特に研究成果を、第1には子どもの学ぶ権利の保障と実現のため、社会的支援体制の構築や民主的な「教育の公共性」の確保の必要性とそのあり様、第2には日本のオルタナティブ教育の現状を総合的に検討し、子どもの学ぶ権利が実質的に保障されるオルタナティブ教育の制度化のあり方の観点から積み上げた。 これらは、開拓的な研究に位置し、今日の多様な学び実践を支えていく基礎理論の一角を占めていく発展性を有していると言える。
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