最終年度には、調査対象であるタイの現地NGO(LPN: Labour Rights Promotion Network Foundation)のカンボジア人越境者子女支援について調査し、支援対象の広がりと就学・学習支援への積極的関与を確認した。 本研究の課題は、教育の地方分権化と学校裁量権の拡大という教育改革下、タイの外国人子女教育がどのような進展を見せているかを明らかにすること、および、日本での外国人の子どもの就学(習)義務化論に関連して、NGOとの協同など教育体制整備の要諦を示すことの2つである。 前者については、タイでは教育行政による広範で一様な外国人子女教育よりも、NGOの外国人支援活動の一環として行われる外国人子女教育支援が強力であることがわかった。従って、NGOの介在の度合いにより、地域間・学校間の支援格差が現れていた。NGOの介在が大きい地域・学校では、外国人子女教育はNGOによって担われていると把握されるほどであった。 後者について、前者のタイでの外国人子女教育の様態を反映させれば、外国人子女の就学習(公教育を強制しない)にも、就学(公教育で受け入れる)をサポートするのにもNGOは大きな役割を果たせるということになる。現在の日本では、ボランティアという名で日本語教育支援・教科教育支援・学校文化適応支援などの補完的役割を担うことが多いが、本研究で調査をしたタイのNGOは、外国人子女教育のイニシアティブをとって地域や学校に働きかけている。日本でも外国人子女教育の改善のためには、NGOの力をさらに発揮させることが重要である。
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