研究課題/領域番号 |
25590241
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
田崎 悦子 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60508745)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農業インターンシップ / 農業研修 / 非農家出身 / 新規大卒者 / 新規就農 / 農業・農学系大学 / キャリア形成 / 農業法人 |
研究概要 |
本研究は、農業を進路選択した非農家出身の新規大卒者が『大学から社会へ移行』する段階で体験する「農業インターンシップ(農業インターンシップ、農業体験、就農研修など)」に焦点を当て、学生がインターンから職業として農業に就くまでの過程とキャリア形成、その過程における影響と課題を明らかにするものである。研究初年度である平成25年度は、大学での農業実習・体験、担い手育成に関する文献研究と、対象・内容とも異なる2種類の調査を実施した。また、予備的調査の段階ではあるが、中間報告として学会で発表を行った。 調査の1つは、新規参入者(非農家出身の新規就農者)を対象に旭川市の協力得たアンケート調査とインタビュー調査(半構造化面接)である。インタビュー調査では、新規参入者に加え、就農研修生(研修中、研修候補者)にも実施した。就農にいたるまでの農業体験、就農研修の現状と課題、キャリア形成を研修生の視点から解明できた。前年度のインタビュー調査(行政、JA、就農指導、新規参入(就農)者、就農研修生)のまとめを北海道都市地域学会で発表した。 2つめの調査は、拓殖大学北海道短期大学環境農学科と酪農学園大学の協力による農業インターンシップ(農村宿泊農業体験)のアンケート調査とインタビュー調査である。学内での農業実習と農業インターンシップとの異なる学び、進路選択の変化を把握するとともに、農業インターンシップの特徴である職住一体・地域滞在型からの影響と効果の知見を得た。この調査に先立ち、北海道内の農業・農学系高等教育機関において、進路状況と学内外の農業実習について聞き取り調査を実施しており、これらのまとめを日本インターンシップ学会で発表した。また、田崎悦子「農学・農業系大学等における農業インターンシップの役割と効果」『インターンシップ研究年報』査読有、第17号に投稿し受理されたが今回は掲載不可となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画に照らし合わせると、現地調査(アンケート調査、インタビュー調査)は予定通りに実施できた。旭川市の新規就農者と就農研修生を対象にした調査では、アンケート回収は約50%、インタビュー調査は12名に実施できた。 高等教育機関では、当初予定していた北海道立農業大学校、八紘学園北海道農業専門学校から対象校を変更し、拓殖大学北海道短期大学と酪農学園大学の協力を得て実施することができた。アンケート回収数は2校で85件、インタビュー調査は5名に留まり、実証研究にはサンプル数が不足することから、26年度も夏期の農業インターンシップ修了後にアンケート調査、インタビュー調査を継続実施する予定である。また、卒業後の進路についての聞き取り調査から、公開されている数字では読み取れない学生の農業への進路希望状況と大学の対応を把握することができた。 本調査は、非農家出身の学生が新規就農への過程とキャリア形成、その過程での農業インターンシップの影響と課題を明確にすることである。受入れ側と体験側の農業インターンシップに対する考え方や意識(期待、要望等)を明らかにするためには、質的研究(インタビュー調査)が重要であると考え、インタビュー協力者とのリレーションを築きながら聞き取り調査を行うことで受け入れ側と体験側の考えや要望、課題等が掴めてきている。 また、非農学・農業系大学から就農研修に入いる学生、学生と農業法人を仲介する団体の代表、道外から北海道の農業法人で農業インターンシップを体験中の学生、道内他地域の新規参入者等のインタビュー調査も実施できたことから研究の進展はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、継続的な調査2つと新たな取り組みとして2つの調査を実施する。継続調査の1つは、現在までの達成度に記載した旭川市の就農研修の現状と課題の深堀として、地元の自治体、JAに加え北海道農政部の支援状況を調査する。特に、北海道本庁の技術普及課、農業普及センターの役割と具体的な支援については、農業技術だけではなく新規参入者の人材育成面での支援の現状を聞き取り調査により把握する。2つ目は、酪農学園大学でのアンケート調査と非農家出身で農業を進路選択している学生へのインタビュー調査である。 新規の取り組みとしては、当初の研究実施計画通り、農業の経営形態別の新規参入実態調査として酪農と果樹を取りあげる。理由として、旭川市新規参入者の調査では、地域特性として経営形態が、野菜、花卉、稲作に限られたことがあげられる。 酪農での就農に関しては、北海道農業協同組合中央会、北海道酪農ヘルパー事業推進協議会に協力を依頼して、アンケート調査、インタビュー調査を実施する予定である。果樹での就農については、農業インターンシップの受け入れ実績のある果樹の農業法人、農業法人就職就農者、また、果樹での新規参入者が多い余市町農政部にインタビュー調査を行う予定であり、余市町での新規参入者の就農経路、就農研修等についての状況を把握する。 調査の中間報告として、所属学会で口頭発表を複数行い、ここで得られた評価を論文に反映させていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初、3月の学会(3月6,7日)出席後に、北海道にて、26年度からの調査にかかわる事前聞き取り調査と関係団体への協力依頼のための訪問をする予定で出張費を見積もっていた。しかし、先方(北海道庁等)が多忙時期であること、また研究者の体調不良も重なり、事前聞き取り調査等を目的とした出張を延期することとした。 そのため次年度使用額が生じることとなったが、改めて26年度に予定していた事前調査等を実行する予定である。 次年度に繰り越された使用額での事前聞き取り調査と関係団体への協力依頼のための訪問等の出張については、1団体は4月に実行されている。また、別の団体についても5月にアポイントが取れており、計画は順調に実行されている。
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