本研究は、学士課程教育における課題解決能力の習得を研究対象とする実証的及び理論的研究である。研究の目的は、アセスメント、レリバンス、マネジメントの観点から、理工系分野の課題解決能力の概念を構築することにある。調査と分析はケーススタディによって進める。ケーススタディでは、理工系分野固有の課題解決能力を構成している要素を明らかにする。 データの分析は次の3つの角度から進める。すなわち、(1)学習成果の測定と評価、(2)政府と教育プログラムが意図する教育改革のギャップ、(3)大学組織による教育活動の運営と戦略である。 本年度は主に日本の大学から量的データを収集した。とくに地方都市に立地する国立大学及び私立大学の工学部に焦点を当てた。課題解決能力の習得には研究室での卒業研究指導が大きく影響するが、1年生から4年生へと学年が高くなるにしたがって課題解決能力が向上するのは4機関中2機関にすぎず、教育プログラムによって研究室のインパクトが異なることがうかがわれた。また、4年生は他の学年に比べ課題解決に必要な能力として状況を正確に認識し、解決すべき課題を特定する能力を重視する傾向にあった。
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