研究課題/領域番号 |
25590246
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
清水 恵子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (10381708)
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研究分担者 |
渥美 一恵 山梨県立大学, 看護学部, 助教 (90468231) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高校生 / 自殺予防教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、山梨県内のモデル4校の高校生を対象に入学初年度から3か年に亘り自殺予防教育(以下、予防教育)を実施し、その成果や課題を縦断的に明らかにすることである。成果は、予防教育の受講前後に、「学習したことが普段の生活に役に立つ」程度を評定法(大変そう思う,そう思う,そう思わない,全く思わない)で測定し、その理由を自由記述する質問紙調査を実施した。また研究会では、平成25年度に実施の予防教育を「一年目予防教育」、フォローアップとして実施の平成26年度予防教育を「二年目予防教育」、さらにフォローアップとして実施の平成27年度予防教育を「三年目予防教育」と修正した。 1.一年目予防教育の成果 受講直後の調査は、「学習したことが普段の生活に役に立つ」程度の肯定的回答の割合はA校97.1%、B校92.3%、C校93.8%、D校86.6%であった。肯定的回答理由の上位は、[自殺を身近なこと・重要なことだと認識した]、[自殺予防の対処法などが分かった・学んだ]、[学んだ自殺予防の対処法を悩んでいる人に活用したい]であった。一方、受講後6か月経過した二年目予防教育前の調査は、肯定的回答の割合はA校78.5%、B校64.8%、C校64.2%、D校58.0%で、4校共18.6~29.6ポイント減少した。否定的回答理由の上位は、[自分の周りに落ち込んでいる人や自殺しそうな人はいない]、[自分は自殺をしたり考えたりしない]、[自殺を日常的なことと感じない・自殺は関係ないこと]であった。 2.二年目予防教育の成果 受講直後の調査は、「学習したことが普段の生活に役に立つ」程度の肯定的回答の割合はA校96.8%、B校90.2%、C校92.5%、D校81.6%で、一年目予防教育の成果に近い割合まで増加した。その背景として、二年目予防教育に自殺予防の対処法の体験的学習を加えたことが増加に影響したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.研究会活動 平成26年度も年間6回程度は集合した研究会を設け、予防教育の実施前後の調査データを意見交換しながら分析し、成果報告する準備をしてきた。研究倫理審査への申請資料についてはメールで意見交換し、申請にこぎつけた。平成27年度から、研究代表者所属機関の看護学部精神看護学領域の教員に新たに研究分担者になってもらい、予防教育実施の補助、研究データ収集・分析の協働等で活躍している。 2.研究モデル校との連携 モデル4校の研究担当教員と連携をとりながら、一年目予防教育の成果及び二年目予防教育の成果を報告し、現在は三年目予防教育を進めている。 3.研究成果の発表 研究成果の発表の場として、平成27年度も日本自殺予防学会に演題登録を予定している。また、平成27年度は日本精神保健看護学会にも演題登録を試みたところ採用となり、6月28日に発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度のモデル4校3年生への三年目予防教育は、D校4月17日(実施済み)、B校5月15日、C校7月1日、A校12月11日~15日に実施する予定である。 三年目予防教育は、1コマ45分あるいは50分の授業のうち、10~15分程度で自殺の実態や自殺のサイン、自殺予防の対処法である「TALKの原則」を復習する他、35~40分程度で教材である「自死遺族の体験談」を講師が朗読した後、生徒によるグループ活動が特徴である。生徒は、まず自分の感じたことをワークシートに書き留め、次にグループでお互いに感じたことを共有するために意見交換し、そしてグループでの意見交換を通してあらためて自殺予防について自分の考えをまとめる。 三年目予防教育受講直後は、生徒に「学習したことが普段の生活に役に立つ」程度の調査だけでなく、3年間に亘って受講した予防教育の4つの「ねらい」をどの程度達成できたかについても調査することとした。つまり、4つの「ねらい」である1)深く悩んだ時には周りの友人や教師に相談することができる、2)身近な友人の『いつもと違う』に気づいた時には声をかけることができる、3)友人からの深刻な相談にはじっくり耳を傾けることができる、4)自分の力を超える相談には周りの大人やいのちのセーフティネットにつなぐことができるについて、「そう思う」「ややそう思う」「どちらでもない」「あまりそう思わない」「そう思わない」の5段階で評価する。 研究者らは、3年間に亘り得られた成果を踏まえ、山梨県内の高校生に対して実効性の高い自殺予防教育を提案する予定である。そこで、当初は計画に挙げていなかったが、研究代表者は平成27年10月中旬~11月中旬、15~34歳の自殺死亡率が4.7(2008年)と極めて低いイタリア共和国の国民性や自殺防止対策及び自殺予防教育を視察し、提案に向けたヒントを学ぶこととした。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を踏まえた「自殺予防教育」プログラムを提案するに当たっては、自殺死亡率の低いイタリア共和国の自殺防止対策等、自殺予防に関する取り組みを参考にする必要があると考え、同国研修のための費用を確保するために、当初予定していた機器の購入を控えた。 初年度、購入を予定していた機器はモデル校で借用したり研究者所属機関で対応することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年10月中旬~11月中旬(約5週間)、15~34歳の自殺死亡率が4.7(2008年)と極めて低いイタリア共和国の国民性や自殺防止対策及び自殺予防教育の実際を視察し、「自殺予防教育」プログラム提案に向けたヒントを学ぶ予定である。 よって、次年度使用額は、旅費や滞在費、研修先への謝礼、通訳者雇用費用に使用する計画である。
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