本研究の目的は、山梨県内のモデル4校の高校生を対象に入学初年度から3か年に亘り自殺予防教育(以下、予防教育)を実施し、その成果や課題を縦断的に検討することである。データ収集は、一年目教育後、二年目教育前後、三年目教育前後5時点での、予防教育は「普段の生活に役に立つ」程度を、これまで同様4件法で評定し、理由を自由記述する質問紙を用いた。三年目教育事後調査には、予防教育「4つのねらい」①深く悩んだ時には周りの友人や教師に相談できる、②身近な友人の『いつもと違う』に気づいた時には声かけができる、③友人からの深刻な相談にはじっくり耳を傾けられる、④自分の力を超える相談には周りの大人やいのちのセーフティネットにつなげられる、の達成状況の評定(そう思う、ややそう思う、どちらでもない、あまりそう思わない、そう思わない)を追加した。 1.三年目予防教育の成果 三年目教育は、自死遺族体験談の講師朗読と小グループによる意見交換が中心であった。事後調査の肯定的回答割合は、A校93.8%、B校87.6%、C校87.8%、D校72.5%で、事前調査より20.9~30.3ポイント増加した。理由の上位は [学んだ自殺予防の対処法を悩んでいる人に活用したい]、[自殺予防の対処法などを活用して、相談にのれそう・やってみよう]、[いい話がきけた・いのちの大切さを学んだ]であった。 2.予防教育「4つのねらい」の達成状況 「4つのねらい」の達成状況は、③の肯定的回答割合は4校共90%以上、②の肯定的回答割合は4校共80%以上であった。①と④の肯定的回答割合は4校共70%以上であった。このように、4校共③と②の達成状況が①と④より高い傾向を示したことから、友人の変化に気づくことや友人の悩みを傾聴することの志向性は高まったが自分の悩みを相談することに苦手意識をもつ生徒像が浮かび上がった。これらの要因検討が今後の課題である。
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