本研究の目的は、地方自治体における教育施策の適切性を判定するモデルを開発することにあったが、研究期間終了時において、モデル開発のための数点の観点を仮説的に提示するに止まっており、今後も研究継続が必要な状況にある。 戦後の中央教育行政は、全国的な基準の設定とその遵守に自らの存在意義を置いてきた。しかし地方分権の推進により、地方政府裁量による教育施策の選択が始まり、資源配分の優先順位等、施策の適切性評価の観点が必要とされる時代になってきた。特に、平成27年度は地方教育行法の一部改正が施行され、首長部局の権限強化によって公教育行政の説明責任を果たす方向が鮮明になってきた。これに先立ち本研究でも、栄養教諭の導入に関する地方議会等の議論を分析した。その結果、第一産業の地域産業に占める政治的影響力や、都市化された地方財政力がある自治体ほど栄養教諭の配置に自主財源を当てねばならないという、本来の制度主旨に矛盾した状況も見受けられた。 研究最終年度は昨年度に継続してスクールソーシャルワーカー(以下SSWr)に関する議論に着目した。北海道・東北・関東に位置する14都道県、7指定都市、合計21自治体の議会と関連委員会の審議録を、SSWrへの補助事業が全国的に導入された平成20年度~平成26年度末の期間で比較検討した。その結果、以下の三つの観点が、当該事業導入の適否を語る上で注目される傾向があった。第一にSSWr導入時の教育委員会事務局の説明と導入後しばらくしてからの説明との整合性の観点、第二に不登校出現率の変化等、SSWrの活動評価の観点、第三に2008年度に10/10補助事業で始まるも、翌年から「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」に位置付けられ、1/3補助事業となったことの影響である。以上の分析結果は平成27年度日本学校ソーシャルワーク学会(第10回全国大会:福岡)において発表した。
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