最終年度は、前年度に実施したフィンランド現地調査の成果を検討し、当初予定していた他国での調査ではなく、再度のフィンランド調査を行うこととした。フィンランドの保育は、施設に関しては一元化されているが、従事者となると複数の養成ルートがあり、それぞれに背景となる専門分野が異なっている。前年度の調査で概要的なことは把握できたが、職務上の実態や養成と現場との関係についてより掘り下げる必要が、養成のあり方を検討する上で避けて通れないと判断したからである。 今年度の調査は、再度現地で養成を行っている高等教育機関のうち、前回同様にオウル大学およびメトロポリア応用科学大学を選択して訪問し、養成機関としての内部質保証をどうように行っているかを含めて調査を行った。また、現地の自治体の保育関係の担当者に、実習受け入れや就職の実態をうかがった。 質保証に関しては、とりわけオウル大学において興味深い事例をうかがうことができた。具体的には、全学的なInstitutional Researchを縦横に展開できるように、学内のあらゆるデータをリンクさせて、全教職員にそれぞれアクセス権限を個別に設定して、必要なひとが必要な情報をいつでも入手でき、リアルタイムに必要な手を打つことができるシステムになっている。 メトロポリア応用科学大学においては、学科の質保証担当者が全学的な質保証システムに情報を挙げるような仕組みをとっている。 大学の自主性をかなり大きく付与しているのがフィンランドの大学であり、保育者養成に関しても同様に自主性を大学にもたせている。この自主性に大きく任されたプログラムづくりの質保証として、内部質保証のシステムと、国レベルでの評価システムは活用されていると思われるが、現場に対する質保証については、現状でも課題が多いことが確認できた。
|