研究課題/領域番号 |
25590257
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大高 泉 筑波大学, 人間系, 教授 (70176907)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 理科教育史 / 明治 / ドイツ科学教育論 / ユンゲ |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究目標は、明治に導入されたドイツ科学教育論・システムが、どのような経路でどのように我が国の理科教育界に普及し、我が国の「理科」教育の原型を形成するに至ったか、そのプロセスと日本の「理科」成立・理科教授論形成への影響を解明することであった。明治に導入されたドイツ科学教育論のうち最も影響力があったのは、フリードリヒ・ユンゲの科学教育論であるため、ユンゲの科学教育思想を中心に分析した。まず、我が国ではその存在がほとんど知られていないユンゲの子であるオットー・ユンゲによる父、フリードリヒ・ユンゲの生涯の詳細な記録:『フリードリヒ・ユンゲ ある伝記』を翻訳・分析した。続いて、すでに翻訳が出ているユンゲの著書(山内芳文訳):『生活共同体としての村の池』ではなく、邦訳されていないもう一つの科学教育書:『ナトゥールクンデ教授の方法への寄稿』(全238ページ)の関連箇所を翻訳・分析した。並行して、明治期の日本側の教育政策・教授論の導入と展開を、ペスタロッチの開発主義とヘルバルト主義を中心にして分析・検討した。一方、理科教育史研究の在り方についても検討を加え、種々の背景と歴史的事象との関連の中での実証的歴史記述に留まらず、他の教科教育史研究の動向にも学びつつ、理科教育史研究の現代的意義についても考察を深め、その成果を他教科の学会において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」主な理由は、3つある。第一に、明治の理科教育形成に最も影響力があったユンゲの著書が、ドイツ語のフラクトゥール体=ヒゲ文字で書かれているために、現代ドイツ語の翻訳より多大の時間を要したこと。第二に、実証的理科教育史研究に留まらず、理科教育史研究の在り方そのものについても検討を深めたため。第三に、明治の教育令以降の教育政策の展開とそれと連動した導入教授論の展開、さらにそれらにも規定された理科教育論の展開が複雑で、関係資料の収集・分析に予想以上の時間と労力を要していること。
|
今後の研究の推進方策 |
残されている平成26年度研究目標を達成するとともに、ドイツ理科教育史におけるユンゲの位置づけを分析し、ユンゲの科学教育論についての評価のドイツと日本の違いを解明する。この研究は、我が国ではこれまで全く手付かずであったが、ドイツでも全く行われていない。そこで代表的なドイツ科学教育史研究であるW.シェラー、I.シーレの研究を中心的な手がかりにして進め、前年度までの研究に基づき、明治期に形成された我が国の「理科」教育の原型がいかなる特質をもち、独創性の育成という点でどのような欠陥や問題点等々を抱えていたのかを解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ドイツに発注していた関係資料が年度末までに届かなかったことにより当該資料代が残ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
ドイツ研究資料購入に使用予定である。
|