研究実績の概要 |
本課題では、正しい金融知識の習得によりヒトが合理的な行動を行うという伝統的な経済学の立場に対し、実社会におけるヒトの非合理な金融行動の存在に着目し、その明示化を試みた。ゲームへの取り組みに対し、評価と分析を行うシステムを用いることにより、金融経済教育の高度化と効率化を目的としている。 最終年度の研究では、操作者の行動のログをとり、非合理行動を明示し本人にフィードバックするシステムを金融取引ゲームという形で実現した。個々の取引のみならず、景気を個人の経済活動の集合体としての全体経済として実現することも可能なシステムである。 ヒトが非合理な行動をとる際のメカニズムのひとつに「計算コスト」の存在が挙げられる。本システムでは、預金、株式、外国為替、金、不動産といった金融資産を一つの取引ゲームの中に含み、多人数同時参加型で時間が進行する中、他者の行動を比較参考にしつつ、操作者に随時の判断を求める複数のイベントを設定した。これらのイベントを、数十秒で認識し判断を行った行動をログとして残し、ゲーム終了後にフィードバックを行う。結果としての金融資産の増減、他の操作者との比較、安全資産での運用との比較とともに、操作者の判断の正誤も評価することで、多面的な視点で操作者の判断の結果がアウトプットされる。そのことにより操作者は自らの非合理行動と計算コストの存在を認識可能となった。 最終年度の発表等では、国際学会International Association for Citizenship, Social and Economic Educationにおける報告のほか、国内の学会における報告、その他書籍出版の形でまとめた。作成したゲームシステムは、今後、現場の教育で活用する予定である。
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