本年度は、以下の二つの研究を進めた。 ①諸外国で行われている諸価値を扱う授業・カリキュラムのうち、アメリカ合衆国の法教育における「正義」「責任」と日本の道徳教育における「正義」「責任」の取り扱われ方の異同を明らかにし、「道徳と社会科の融合」を可能にする一方略として「公正・正義」を実現する態度の重要性を学ぶこと(道徳)と「公正・正義」の在り方を問うこと(社会科)の「役割分担」があることに言及した。その研究成果の一部を、日本弁護士連合会で開催された「法教育教員セミナー」(2015年5月23日開催)で報告した。 ②課題として残っていた「児童・生徒の認識レベル」を視座とした「道徳と社会科の融合可能性」を探る研究について、授業レベルで検討を行った。具体的には、生徒がその授業でどのような判断を行ったのか、その判断(道徳的判断)を踏まえた上で、より「高次な判断」として法的判断が存在しており、法的判断に至るための授業の工夫等について検討を加えた。ここで示した「道徳と社会科の融合」を可能にする一方略は、「普段行われている子供の道徳的判断をより『高次な判断』としての法的判断に引き上げること、そしてそのための授業上の工夫」である。その研究成果の一部を、全国社会科教育学会第64回研究大会自由研究発表で報告した。 ①や②の研究成果の他、これまでの3年間の研究成果等をまとめて、研究を全て終了した。なお、これまでの研究成果等の一部については、福井県敦賀市で開催された「法教育シンポジウムin敦賀」(2016年1月30日)においても報告した。
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