現在、授業研究は次の4点で課題をもっている。①授業研究の効果が判然とせず、行うことに意義があるという惰性的な側面をもっている。②授業研究の研究目的、ねらいが明らかではなく、曖昧である。③学校現場の関心が教師から学習者に移行していることから、授業研究の目的を学習者の学習成長の問題と捉えているが、それを判断する手立てが作り出されていない。④とりわけ、教育現場における授業研究が指導案に基づく検討を進めているが、そこに書かれている指導の内容と方法に関しては議論するが、学習者の達成に関して、またそれに関わる評価規準に関しては検討しない。 これらの課題克服方法として、池野グループは、達成改善型授業研究を生み出した。達成改善型授業研究とは、学習者に達成させたい状態を事前に学習者用評価規準として想定し、それにもとづき、それへの達成をA、B、C という3 つの段階に区分し、教師と学習者の両者においてその達成度が確認でき、その授業の良しあしを判定し、実際にできるように試みることを本研究では目指している。 2014年度では、達成改善型授業研究の基本マニュアルにもとづく3つの小・中学校において達成改善型授業研究を行い再検証し、達成改善型授業研究を評価し、教育効果を確定した。(1)達成改善型授業研究のマニュアルを作り、(2)広島大学附属小学校、尾道市の2つの中学校で、実験的に試行した。また(3)10月には、アメリカ、シンガポール、韓国の授業研究者を招聘し、授業研究を観察するとともに、達成改善型授業研究に関する意見を求め、議論した。 研究成果としては、次の3点である。①学習者用評価規準を作り出すことができたこと、 ②評価規準を観察者、教師だけではなく、学習者にも活用してその授業における学習達成に関する自己評価を進める試みを行ったことである。
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