研究課題/領域番号 |
25590266
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田邉 隆 愛媛大学, 教育学部, 教授 (80155192)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 模倣 / ピアノ演奏 / 視覚化 / パワー包絡 |
研究概要 |
中学校・高等学校の学習指導要領(音楽・芸術)において、「根拠をもって批評する」学習が求められるようになったが、これまでの聴覚情報だけに頼る方法では、音楽表現の意図を具体的に把握しがたい。特に鑑賞の学習において顕著なため、音楽鑑賞で批評する学習活動には、困難さがつきまとう。そこで、具体的な批評を行うために、音響的な情報とともに、演奏データを視覚化することで、「根拠をもって批評する」学習を、より推進できると考えた。 研究目的である音楽指導における「非連続型テキスト(PISA型学力)」についての考察が有効であると考えた。すなわち聴覚情報の視覚化の視点から、実際に演奏比較を行い、データ化を試みた。具体的な調査内容は、市販CD(著名な演奏家の演奏)等9サンプルの中から、ピアノ学習者5名がもっとも指向する演奏家をそれぞれ1サンプル選び、その演奏についてどこまで酷似する模倣が可能であるかについて調査を行った。また、模倣の類似性や類似度については、ピアノ指導者(熟達者)2名の協力を得て、聴覚的な判断(音源)と視覚化情報(パワー包絡図)の両面から考察を行った。その結果、厳密な意味で、演奏を模倣することはきわめて難しく、酷似した模倣を行うためには、注意深い集中力と記憶力に加え、感受した演奏を再現できる演奏技術が求められることが分かった。また、意図的に類似しようと試みても、模倣しきれない部分が存在し、それはピアノ学習者の癖や音楽解釈と捉えることができ、ピアノ学習者の個性と捉えることもできる。 演奏模倣の研究を推進することにより、著名な演奏家の演奏技術を獲得する方法として、学習者の個性的な部分を鮮明化するとともに、学習方法の有効性について明らかにしたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度(3カ年計画)であるが、市販CD等の情報の視覚化と生演奏録音の視覚化の両者について、パワー包絡による解析が、類似性の判断資料に用いられる事が確認できた点を挙げることができる。 また、パワー包絡による演奏の視覚化データが、熟達者およびピアノ学習者自身の聴覚的な判断の有力な補助資料になることが確認された点である。
|
今後の研究の推進方策 |
著名な演奏家の演奏について、パワー包絡による解析データの蓄積をさらに推進し、演奏の類型化を行う。また模範演奏と学習者の演奏比較についても、引き続き、解析データを求め、学習者の演奏技術向上に援用する方策を考察する。 教育現場における音楽鑑賞の授業展開でも用いられる資料試作を、最終段階までに行いたい。
|