音楽表現は抽象的であるため、学習者がその分野の初心者である場合や予備知識が乏しい場合などは、言語化や音楽理論での説明が困難である。そこで、音楽の表現意図を可視化することを試みた。音量変化による表現の変化、パワー包絡図の提示、複数声部の音量差による旋律認知について、音楽表現の可視化の視点から教材作成し実践を行った。具体的な作成教材は、編曲も含み初等教育用として「きらきら星・ふるさと」、中等教育用として「アヴェマリア」「二匹のネコの滑稽な二重唱」などである。 音楽における形式の認識は、聴覚より視覚による教材提示の方が分かりやすい点を鮮明にできた。最初の段階でまったく認識ができない学習者も、可視化した情報を得た後であると、再度聴取のみの学習になっても明確に認識できる結果が示され、可視化の有効性を示すことができた。音楽認知の面で非連続型テキストの教材提示を補助的に行うことは、さらに理解感得しやすい学習が期待できることを意味している。 また音楽の嗜好と脳波の関係についての予備調査を行った。ショパン「ピアノソナタ第2番 変ロ短調 作品35」を11種類の演奏で4回聴取し、嗜好度について5段階評価を行い、その評価過程における脳波の変化を調べ、鑑賞の評価観点として以下の2つの観点を得た。まずδ波の変化が少なく、θ波α波β波の変化が顕著である点。次にθαβの3波の変化を考察することで、嗜好度は同一であっても楽譜ありと楽譜無しで脳波は異なる場合(楽譜有無の差)、前半と後半のそれぞれ2回ずつの類似性を示す場合(時間経緯の差)、嗜好度評価は異なるが脳波の傾向が類似する場合(各脳波の比率の差)の3観点を見いだした。
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