本研究の目的は、ICTを活用して、美術科教員養成における写実的デッサンの効率的学修を実現する自修支援システムの基礎研究を行うことである。 写実的表現は、現代美術では否定されてきたが、プロダクト・デザイン、建築等の実用的分野では、心の中に描いたイメージを客観的に表現し伝達する方法として必要不可欠であるため、中学校美術科における写実的表現の授業は重要なものの一つである。したがって、その授業担当者を養成する大学・学部で、写実的表現の基礎となる写実的デッサン力の育成が必要である。 2012年、中央教育審議会の答申で、大学教育の質的転換として「ICTを活用した双方向型の授業・自修支援や教学システムの整備など、…充実する」と謳われた。そこで、ICTの活用によって、学修者が写実的デッサンを自修することを支援するシステムの構築を着想した。 ICTを活用した写実的デッサン自修支援システムの実現性を検討するため、写実的デッサンの学修に活用できると考えられるデジタルカメラ、タブレット型端末、ノートPC、液晶ディスプレイ等のICT機器を使用して、写実的デッサンの実験を三段階で行い、被験者に対してアンケート調査を行った。教員養成学部美術科の学生を被験者とした。最終的に、タブレット型端末と液晶ディスプレイを使用したデッサン実験及びアンケート調査を行った。 その結果、タブレット型端末と液晶ディスプレイの活用によって、写実的デッサンの学修を効率的に進められると考えられた。学修者が、構図を想定して、タブレット型端末で対象物を撮影することも、適宜、構図を確認することができるので、写実的デッサンの学修に有効であると考えられた。これらのことから、ICT活用による写実的デッサン自修支援システムが実現可能であると考えられた。
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