研究課題/領域番号 |
25590268
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鈴木 慶子 長崎大学, 教育学部, 教授 (40264189)
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研究分担者 |
三浦 和尚 愛媛大学, 教育学部, 教授 (40239174)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 手書き / 読み書きの力 / PC依存 / 読めるけれど書けない / 視覚だけの読み / 視写による読み |
研究実績の概要 |
初年度(H25年度)では、卒業論文執筆時における学生の学習活動と書字行動との関連を調査した。その結果、日本語の核となる漢字を手書きすることが限りなくゼロに近いことがわかった。つまり、学生はPCにアシストされながら思考している。この状態が習慣化すると、卒業論文を執筆する過程で育成される思考力は、手書きして培ってきた思考力とは異なることが予想される。パソコン依存時代には、「書き」で育成する思考力が、変容していく可能性がある。そこで、本年度(H26年度)は、「読み」との関連について調査した。学生に、ある短編エッセイを黙読させる(視覚だけによる読み)。次に、同一の短編エッセイを視写させる(視写による読み)。その質的違いについて、自由記述で報告させた。すると、以下のようなことが上がってきた。 ①黙読すると、5分間であった。一方、視写すると、3時間半かかった。肉体的も疲れ る。(視写は全員が、時間がかかる、身体的に疲れる、と回答した。)②黙読では、内容の大筋を理解しやすい。一方、視写すると、一言一句に気が付く。黙読で読み落としていることに気が付く。③視写すると、表現や表記の細部に意識がいく。自分の統語法との違いに気が付く。そこから、読みを深めていける。④黙読したときは、読みの視点が主人公である。そのために、主人公を取り巻く景色などの描写を読み飛ばしていた。視写すると、細部が克明になる。だから、イメージが多角的になった。⑤視写すると、読むことができるが書くことができない漢字がたくさんあることに気が付いた。⑥視写すると、不明な言葉が気になって、辞書で調べた。黙読であったら、辞書で調べたりはしない。⑦視写は、集中力が必要である。集中するから、深く理解できる。あるいは、字を書くことに集中しすぎて、内容が頭に入らない。以上のように、手書きは「読み書きの力」に大きく影響していることが裏付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度(25年度)には、大きく計画を組み直した。その理由は、被験者への謝金が支払えなくなったこと、及び調査に使用する計画であったデジペンのサポート体制(日立製作所中央研究所)がなくなったからである。 そこで、初年度(25年度)では、謝金の入らない方法によって、教育学部学生を対象にし、「書き」に関して調査を行った。そのことより、PC依存の度合いがもっと大きい集団を対象にすることで、より鮮明に見えてくるものがあることが予想された。 26年度では、他学部の学生を対象とした「書き」の調査を行った。その段取りに手間取った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(27年度)では、教育学部生及びそれ以外の学部生を対象にして、「読み」と「書き」と調査を行う。併せて、生活との関連についても追跡していく。 以上を総合して、手書きで育成する「読み書きの力」に関して、より明確にして、何らかの指標を導き出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画変更に伴い、人件費・謝金に関わる残額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
おおよそ、以下のように予定している。調査、解析のアルバイター雇用:30万円、愛媛-東京、長崎-東京での打ち合わせ旅費:25万円、情報収集及び成果発表のための旅費:15万円、インクカートリッジなど消耗品:20万円、その他:10万円
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