最終年度である26年度に基礎資料として新しく収集した授業記録は延べ685分に及び、昨年度に収集した延べ620 分に加えて、二年間に収取した映像記録は総計1305分に達している。これには、若干の中学校理科授業の記録も含まれている。これらの収集は、本研究の研究協力者であると同時に、基盤研究(B)「『個別』と『普遍』を区別する理科指導法の開発(26-28年度)」の研究代表者でもある、中城満講師(高知大学教育学部)との緊密な連携の下に行われた。この基盤研究には報告者も連携研究者として加わっており、この基盤研究が採択された結果を受けて、本挑戦的萌芽研究を基盤研究の戦略的基盤を与える研究と位置づけし、より一層の連携を図った。授業記録はすべて電子媒体で保存し、同時に音声の文字化はすべて完了した。 詳しい分析は先の基盤研究との密な連携の下に現在進行中であるが、文字化の過程で得られた概略の知見の一部は、以下に記す査読付き論文中城満、楠瀬弘哲、国沢亜矢、川崎謙(2014)「自己の思考の変容に対する気づきを促す手法」科学教育研究38巻(2-11)として発表済みである。加えて、二つの国内学会と二つの国際学会で口頭発表も行った。そのうちの一つは国際学会による招待講演であり、本挑戦的萌芽研究の提起する問題が日本の理科教育に限られず、非西欧諸国に共通の問題であり、国際的視野において考察されるべき意義を持っていることを主張したものである。この立場から本研究の提起した問題を逆照射すれば、本研究が我が国の理科教育に対して持つ意義がより一層明らかになるはずである。現在、その国際的意義を明らかにするために欧文による報告を準備中であり、英文校閲サービスによる校閲も完了し、最終改訂の段階である。
|