本研究の目的は、青年期の人格形成の在り方に着目した体系的な学校教育について考察を行い、これまでになかった高校生期における道徳教育に特化したグランドデザインを構築し、高等学校における国内外の教育改革の第一歩を目指すことである。 (1).高校生期のアイデンティティについて…高校生期は、発達段階にともなう心理的・身体的に不安定な状況にあり、友人や家族等の周りの人々との関係性にも大きな変化が生じる時期である。こうした高校生の実態を踏まえ、高校の道徳教育では、彼らが自尊感情を高めながらアイデンティティを形成していけるよう、真に必要な価値意識を見極める力と、その価値基準となるものを彼らの内に、しっかりと育むことが求められていることを明らかにした。 (2).良心の覚醒を目指す良心教育…真の価値を見極める基準となるものは、シュプランガーによれば、自己の内奥にある「良心」が覚醒されていることだとされ、この「良心の覚醒」を目指す良心教育こそが、アイデンティティの形成にとって、重要な役割を果たすものとして考えられる。つまり、高校道徳の充実には、その中核となる教育理念が必要であり、それが高校生期という発達段階に達してこそ求められる「良心の覚醒」を目指す良心教育であるべきことを確認した。 (3).キャリア教育と道徳教育のグランド・デザイン…本研究では、近年、大きな注目を集めている我が国のキャリア教育の変遷について文献研究を中心に考察を行い、さらに諸外国の現地見学等も通して考察を行ってきた。その結果、日本ではアメリカのサービス・ラーニング等に比べて、単発的な学習で終わっていることが多く、長期的学習の必要性があることを指摘した。 最後に、本研究の総括として「高等学校における道徳教育のグランド・デザイン構想」について提案した。より実践的なものとして再構築していくことが求められる。
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