研究課題/領域番号 |
25590276
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
宮城 信 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (20534134)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日常のコミュニケーション / 国語表現法 / ロールプレイ演習 / 他校種に対応する教材 / 不適切な会話例の考察 |
研究概要 |
本研究では、高校生~大学生を対象に発展的な対人コミュニケーションスキル指導法の提案と多様な校種の教育現場で活用可能なメディア教材の開発・発信を行うことを目的とする。 本研究の特色は、学生個々が「謝る」「説明する」「頼む」等の日常のコミュニケーションに関する「問題を含む会話例」を評価し、自分のこれまでの話し方を省みながら方略を再構築して実践するという指導法を提案することにある。課題に対する〈(観察→熟考→発見)評価→実践→改善〉という一連のプロセスが学生に生まれ、創造的に問題を解消することができるようになる。本年度(平成25年度)は、本学のコミュニケーション関連の授業で複数回本実践を取り入れた。本研究の指導法は通常1時間で完結し、会話モデルを入れ替えて繰り返し行われる。例えば「相手の感情を無視した説得」のような問題を含む会話モデルを提示し、評価して問題点を洗い出す。学生同士の意見交換を経て、その問題点を修正してどのような順序でどのように話せば、相手の理解や共感が得られるのかを意識しながらロールプレイを用いて演習を行う。また、聴衆の学生たちはそれを評価し、最終的には指導教員がポイントを整理して参加者全員で理解を共有するという流れである。 各単元の目的を明確にして学習がスムーズに行えるように専用の教材を用意した。試用版も含め本年度で4回分の教材を作成した。実践と並行して、協力校の高校でも同様の実践を行うため、協力校教員との打ち合わせと教材の修正を行った。特に本年度では今後研究が円滑に進行するように協力校との体勢作りに専念した。 なお本年度の研究成果を経過報告として、発表:「高校の授業で行う日常のコミュニケーションスキル」第10回実践持ち寄り会(愛知大学)、論文:「ロールプレイを応用した国語表現の授業」『イマ×ココ』創刊号(2013)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度後期から所属機関が富山大学に変更になり、研究・実践環境に変化があったが、研究はおおむね順調に進展している。また、研究協力校の事情で予定通りの指導実践が行えなかったことに関する研究計画の修正を行ったが、計画計画全体に顕著な遅延はない。 以下、本研究の「研究の目的」に照らして達成の概況を述べる。まず、「日常の場のコミュニケーションスキルの育成」について、本学のコミュニケーション関連科目において、試用版テキストを用いて実践を行った。日常交わされる会話が教材であるため、初めは学生たちに何をしてよいのかとうような戸惑いが見られたが、回が進むにつれて、問題例についてよく考え、問題点を見つけ評価する(そして問題を解決する)ことができるようになった。授業終了後に小調査を行った結果、日常のコミュニケーションについて深く考えるよい機会になったとの回答が多く見られた。 次に「現在の国語表現の授業に対する提案」については、現在、多くの学校現場では文章表現中心の授業がなされており、口頭表現は自己紹介やプレゼン演習などに留まっている。本研究のように、演習内容がそのまま実生活の問題解決に応用できる教材は希有であると思われる。現在までに試用版を数回分作成し、本学での実践を行った結果、おおむね好評であった。協力校での実践は現在準備中で、協力校の教員と教材の最終修正を行っている(6月中に実践予定)。 また「校種を問わず実践できる指導法モデルの構築」については、これまでの実践に基づき、高専に加え、高等学校・大学での使用に耐えうる教材であることの検証が進められている。現在、既存の教材を基に増補版を作成中である。また、外国人を対象とした日本語教育教室からの本教材の使用申請もあり、国語教育に留まらない広がりが期待される。この一点からしても、本研究の目標が十分に達せられる状況にあることが窺える。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力校等の都合により、当該校での実践が困難な状況になったため、研究計画を一部変更する(協力校での実践部分に関してのみ)こととした。当該協力者である高校教員には引き続き助言・資料提供で協力を依頼する。新たに実践協力校として横浜総合高校の泉一彦教諭への協力を取り付けた。泉教諭は国語教育のみならず、外国人児童に対する日本語教育の経験も豊富に有しており、本研究で目指す「校種を問わず実践できる指導法モデルの構築」を達成するための助力を得ることができる人材である。 今後の研究の推進方策は、全体的な研究計画は申請書に準じて進められる見通しである。個別的には、本研究で作成される指導法・教材の作成は順調に進められている(すでに試用版も4編作成されている)。それに伴い、授業実践も相当回行われており、学生の反応の蓄積も十分な量が得られている。一部本学以外の研究協力校での実践の時期を延期することになった(平成26年6月実施予定)ことがあるが、一方で予定外の校種での並行実践が行えることになった(大学留学生対象の日本語教育教室)ことがあり、全体としてみれば調査範囲の拡充と位置づけることができる。特に後者は望外の好機で、本教材が外国人児童や留学生用の日本語教育における有効性を有する検証ともなる。併せて実践資料を収集して分析を行っていきたい。 作成された指導法・教材の頒布に関しては、使用版、改訂版を製本して配布するほか、HP等で公開を予定している。要請があれば高校、専門学校などでの授業に提供するほか、指導助言などを積極的に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者担当の研究は順調に推進したが、研究協力者担当の勤務校の事情により、協力校側の実践の準備が予定通り進められなかった。そのれに伴って実践で使用予定の開発教材の内容を確定することが一部困難になり、教材の印刷が翌年持ち越しとなったため次年度使用額が生じた。 研究協力校側の進捗状況に一部遅れが発生しているが、研究計画は順調に推進されている。25年度に印刷できなかった教材も26年前半には完成予定である。研究協力校での実践に関しても、新たな研究協力校をお願いして予定通り実施予定である。26年度に繰り越されたた助成金を含め、経費使用計画に大きな問題は発生していない。
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