研究課題/領域番号 |
25590277
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
萩原 拓 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00431388)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 性行動 |
研究実績の概要 |
H26年度は最新の資料および情報収集を継続するとともに、教育・福祉機関関係者との意見交換およびケース協議、また当事者へのダイレクト調査を行った。ASDの性行動には社会性スキルを含む適応行動に関する特性が密接に関係していると考えられ、調査も適応行動関連の情報を多く収集することとした。 当事者への調査としてまず、愛知県日間賀島における、中京地域の発達障害をもつ子供たちのための合宿において、性に関する実態、特に社会性スキルおよび日常生活スキルに焦点を当て、当事者と支援者双方に調査を行った。今回は、特に小・中学生の女子に関しての性行動の実態に関するインフォーマル調査と支援者側の課題についての情報収集および協議を行った。ASDのある人は大人になってもファンタジーを持ち続けている人が多いが、本調査対象の女子にはファンタジーを強く持っている子どもが多く、それが異性に対する価値観や行動を制限していることが示唆された。また、支援者との協議から、女性独特の衛生観念や服装、しぐさなどを経験的に学ぶことが難しいことが分かった。 また、札幌地域においてASDのある成人期の方々とのフォーカスグループ・ミーティングを行った。現在の生活においての困難性のみならず、思春期の経験についても意見交換を行った。参加者全員に強い感覚過敏などの感覚特異性がみられ、このことが彼らの社会的交流に大きな影響を与えていることが分かった。また、参加者全員に思春期におけるネガティブな異性関係の経験があり、現在の性行動に自ら制限をかけている傾向が見られた。思春期にある当事者と比較して、青年期以降の当事者はより客観的に自分を語ることが可能であり、また、自身が思春期であった時には気づかなかったことが、大人になってから反省することができる人が多く、今後の実態調査及びアセスメント開発のデータソースとしてふさわしいと考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、今後の調査及びアセスメント開発の方向性を決めるデータ収集及び考察ができた。本研究当初の調査計画に対し、当事者の実態に合わせて若干の軌道修正も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
より構造化した実態調査およびアセスメント開発の基盤づくりを行っていく。調査対象は、児童生徒またはその家族よりも、発達障害者支援センターなどの福祉機関での情報収集が現時点でもっとも客観的かつ包括的なデータが得られると考えられる。また、青年期以降の当事者は、現在思春期を迎えている当事者よりもより客観的に自分たちの過去について振り返ることが可能であることから、今後も彼らに対しての調査を継続していく。
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