研究課題/領域番号 |
25590278
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90431634)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実行機能 / 個人差 / 認知トレーニング / 実験系心理学 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度に引き続き、評価アプリケーションの基礎構築を行った。実行機能の評価に使用する認知課題の選定およびそれらの課題の妥当性・信頼性を検討した。これまで、連続遂行課題、時間評価課題、数ストループ課題、Go/Nogo課題、フランカー課題、および注意切替(シフティング)課題などを作成して、試験的運用を試みた。これらに加えて、視線計測を利用した、視線追従性課題、アンチサッケード課題、および持続的注意課題などの新しい取り組みも開始した。 数ストループ課題は前年度に小学生を対象に広く実施して、その有効性を確認したところであるが、今年度はそのデータをさらに詳細に分析した。二つの数字の数値の大きさを判断する「数値判断課題」とサイズの大きさを判断する「サイズ判断課題」は共に、二つの数字の大小関係が不一致の「不一致条件」において、反応時間が他の条件より長かった。数値判断課題の不一致条件の反応時間が、4,6年生に比べて、2年生は長いことから、2年生にとっては、特に不一致条件が難しいことが示された。興味深いことに、エラー率は、6年生に比べて、2,4年生で高い傾向を示したことから、処理速度は4年生までの段階で十分に備わってくるものの、その処理速度が正確さを伴うようになるには6年生ぐらいまでかかるという発達の時間差が存在する可能性が示唆された。数の認知コントロール能力の処理速度と正確さは一様に発達するのではなく、このような成熟の差に違いがあることを考慮し、2年生から4年生にかけて適切な指導を行うことの重要性が提案できた。結果を参加者にフィードバックすることで、地域社会へのアウトリーチ活動も行うことができた。 認知課題の検討と並行して、タブレット端末上で利用可能な、実行機能評価アプリケーションの開発と、それらを統合的に活用するポートフォリオ機能を持つデータベースの実装を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の改修工事による粉塵被害による研究の遅れを挽回しつつ、数種類の認知課題を作成すると共に、実際にその一部(数の認知コントロールに関する課題)を、小学生対象に実施することにより、課題の妥当性および信頼性を検討することできた。また参加者に対して、結果のフィードバックを適切に行い、当研究室の社会的信用を獲得する活動を続けている。同様のプロトコルにより、引き続き、各認知課題の運用可能性を検討していく見通しが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、作成中の認知課題プログラムの妥当性・信頼性の確認作業を継続し、タブレット型端末で利用可能な実行機能評価のアプリケーションの開発を進めていく。その際、学習記録をポートフォリオとして活用可能なデータベース型のシステムを併せて提案していく予定である。
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