研究実績の概要 |
知的障害者における就労場面の動向として、一般就労者数が年々増加している。知的障害者の雇用環境が拡大することに伴い、その課題も顕在化し、中でも、知的障害者の就労継続支援は重要な課題である。本研究は、対応方法の1つとして知的障害者のメンタルヘルスの評価法の開発を試みた。 イギリスで開発されたThe Mood, Interest & Pleasure Questionnaire(Ross and Oliver,2003)を参考とし、他者評定による質問項目を作成した。質問項目は全25項目からなり、「抑うつ気分サブスケール」12項目、「興味または喜びの喪失サブスケール」13項目で構成された。また、対象者のプロフィール(年齢,性別,業務内容等)、メンタルヘルスの問題や精神的不調の有無、評定者との関係に関する質問項目も設定した。関東地方にある特例子会社に協力を依頼し、知的障害のある社員のうち、本人または保護者に承諾が得られた者を対象とした。評定者は、対象者とともに働くスタッフ(指導員やマネージャー等)とした。 最終年度は、経年変化を検討するために、全25項目による総得点、抑うつ気分サブスケール得点、興味または喜びの喪失サブスケール得点について、X年とX+5年時点で比較した。その結果、対象者全員の得点が低下していた。また、総得点が30点以上低下した対象者が2名いた。2名は、抑うつ気分サブスケール得点と興味または喜びの喪失サブスケール得点のどちらにも低下がみられた。また、そのうち1名は、評定者より、ここ1年の間で精神的な不調が観察されたという報告がある事例であった。 本研究で作成した質問項目は、知的障害者のメンタルヘルスの変化を評価することに役立てることができると考えられる。就労継続支援のためのメンタルヘルス管理の実践活動に活用できる。
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