本研究では、(1)日本語の発達性読み書き障害(以下「ディスレクシア」と呼ぶ)の児童が示す読み書きの様々な特性について調査・観察等により包括的に検討し、ディスレクシアの認知・行動特性のサブタイプを特定するとともに、(2)各々のディスレクシアのサブタイプの背景にどのような認知障害があるのかについて、様々な検査・心理学的実験を通じて実証的に明らかにすることを目的とした。さらに、得られた知見を基に、(3)ディスレクシアを診断するための客観的な診断評価検査法を開発するための礎となる情報を提供するとともに、試験的なディスレクシアの検査法を開発することを目指した。 平成25年度は、(a)国内外のディスレクシア研究に関する文献・資料を収集して文献データベースを作成し、(b)先行研究に見られるディスレクシアの認知障害を診断するための方法・検査法を整理・分析するとともに、(c)ディスレクシアの症状を類型化し、ディスレクシアのサブタイプ(視覚性失読・失書/音韻性失読・失書/表層性失読・失書/深層性失読・失書)に関して予備調査を行った。 平成26年度は、異なるディスレクシアのサブタイプの背景に、どのような認知障害(視覚性障害/文字素-音素対応規則障害/綴り・音韻辞書障害/意味システム障害/書字コントロール障害など)があるのかに関して、ディスレクシア児を対象に予備実験を実施した。 平成27・28年度は、日本語のディスレクシアの認知・行動特性に関する包括的な本調査を実施し、ディスレクシアのサブタイプについて検討するとともに、各サブタイプの背後にどのような認知障害があるのかをについて実験・検査を用いて検討し、基礎的・試験的なディスレクシアの検査法を考案した。
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