研究課題/領域番号 |
25590289
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
片田 房 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70245950)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ギーク症候群 / コミュニケーション困難 / 理工系学生群の科目嗜好 / 効果的英語学習 / ESP |
研究概要 |
新しい国際診断基準により自閉症スペクトラム障害と総称されることになったいわゆる第三の障害は、教育現場においても実態の把握と対応の難しい障害である。大学においても相当数のコミュニケーションを困難とするギーク症候群学生がいるものと推察され、実態の把握と関係者への啓蒙が早急に望まれる。本研究ではこのような問題意識の基に、次の活動を行った。 1. 大学生の気質と批判的思考性/自己効力性志向に関して、既に標準化されている質問表を中心に精査し、四択に改良した。また、学生の科目嗜好を問う質問を作成し、合計124問からなるアンケート調査表を作成した。 2. 理工系学部生群(500名)と所属学部を指定しない混合学部生群(200名)を対象に、アンケート調査を行った。両被験者群に気質的傾向の差異はみられないものの、自閉的傾向が共に約7%と高い傾向を示す結果であった。科目嗜好に関しては両被験者群に明らかな相違がみられた。特に理工系学部生群において、苦手科目(語学)と得意科目(数学・物理・化学)の間の大きな乖離は、コミュニケーション能力開発が目的の一つである英語科目の指導法に工夫が必要であることを示唆する結果であった。 3. 平成25年7月、ジュネーブ(スイス)で開催された第19回国際言語学者会議(The 19th Congress of International Linguists)にて、発達障害に関連するセッションを中心に出席し、本研究の存在意義について広く共感を得た。 4. 平成26年1月、マニラ(フィリピン)で開催されアジアEFLジャーナル国際学会にて発達性ディスレクシアを中心とする発表を行い、本研究との関連性を説明した。また、同年3月、エクサン・プロバンス(フランス)にて開催されたESPの研究学会に出席し、理工系学部生群の分析結果に基づき、大学における英語教育はESPが効果的であると提言した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全般的に標準値の設定が難しいデータもあり、気質的傾向と批判的思考力/自己効力性との相関性の有無の検証に時間がかかっているが、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目である平成26年度では、アンケート調査表を更に精査し、英語版への改良を進める。当初予定した英語圏(特に米国)における調査に加えて、東南アジア圏での調査協力を模索し、可能な限り実行する。日本においても調査対象者を広げ、データの有効性を高める。また、第1年目(平成25年度)で行ったアンケート調査では、得られたデータの統計的意味の分析に未完の部分があり、特に気質的傾向と批判的思考力及び自己効力性の志向傾向との相関性の有無の分析を中心に補完する。 本研究の中間成果を国内外の学会にて発表し、本調査研究の普遍性と社会的意義、及び高等教育における第三の障害について、関係者への理解と啓蒙に努める。また、諸外国(主に障害者教育の先進国といわれる米国)の高等教育におけるインクルーシブ教育の実践例を調査し、日本におけるカリキュラム開発のモデルの構築を試みていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度に予定していたNortheastern University(米国)への訪問と同大学に固有のCooperative Education Programの調査に関し、訪問先との時間調整が年度内に難しくなったため、本調査の実施を次年度に延期したため。 本繰越金額は、上記に記した当初の目的を遂行するために次年度に繰り越して使用する。 尚、次年度分の助成金は、次年度に遂行予定の活動に使用する。
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