途上国の状況をより客観的に解釈するため、フィリピン共和国におけるアンケート調査をミンダナオ島の大学(SPAMAST-Southern Philippines Agri-business and Marine and Aquatic School of Technology)からマニラ都市部の大学(Far Eastern University)にまで拡大し、平成27年12月から平成28年2月にかけて実施した。現地の研究協力者によるデータ収集とデータ入力が適正に行われたことの研究代表者による確認作業が同年3月中旬になったため、当初の本研究補助事業期間(平成25年年度-27年年度)の延長を申請した。 平成28年度は、「大学生気質、嗜好科目、批判的思考性/自己効力性志向」に関するアンケート調査の結果得られたデータの総合分析を完了し、以下の結果を追確認した。 先進国(日本)と途上国(フィリピン)の間に顕著な差は存在せず、大学生には一般的に若年層特有の自閉的傾向があること。しかし、履修科目の嗜好性の調査においては、日本の学生は在籍する学部の専門科目に強い嗜好性を示す一方、語学科目(英語)には苦手意識を抱いている傾向があること。一方の途上国(フィリピン)においては、専門科目に強い嗜好性はみられず、英語科目についても苦手意識の強さは確認されなかったこと。 この結果は、専門性の深化と英語によるコミュニケーション能力の開発は必ずしも調和するものではないことを示唆している。日比両国におけるこのような差は、自閉性、コミュニケーション能力、言語環境と教育の言語、思考と認知の発達、ひいては国力をも巡る研究テーマに発展する可能性を示唆する結果となった。本研究結果は、ドイツにて開催された国際学会にて発表した。
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