研究課題/領域番号 |
25600004
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宗像 利明 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20150873)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表面界面物性 / ナノ材料 / ルブレン / グラファイト / 光励起 / 光電子分光 / 光電子放射電子顕微鏡 |
研究概要 |
有機薄膜と基板の界面での光励起過程は太陽電池をはじめ有機電子素子の機能性の理解に不可欠な素過程である。吸着分子の非占有準位への電子の光励起は、分子内遷移が主要な経路であるが、基板と分子の相互作用のために、基板からの遷移が大きな寄与をする場合がある。申請者は、2光子光電子(2PPE)分光法を用いて、分子の非占有準位と基板の非占有鏡像準位(IPS)の相互作用が分子の光励起に大きな影響を与えることを見出したが、この過程を光電子放射電子顕微鏡(PEEM)で可視化することを目的とした。すなわち、非占有準位に共鳴/非共鳴条件での2PPE-PEEM 画像から分子と基板が相互作用している空間領域を明らかにした。これにより、基板を介した分子励起が起こる機構を解明し、分子励起の効率化の指針を探求した。グラファイト上のルブレン薄膜の2PPE-PEEM像では、1層以下の被覆率の場合、励起光が4.4 eVの近辺でのみ明るい島状構造が観測された。他の光子エネルギーでは膜は均一に見えた。また、被覆率が1層を超えると島状構造は観測されなかった。2PPE分光では一層以下の膜で、非占有準位(Lnと表記)への非常に強い共鳴励起が4.4 eVの励起光で観測されるが、今回のPEEMの結果と一致した。すなわち、強い共鳴励起は均質な膜では起こらず、膜の特定の場所でのみ起こることが確認できた。さらに、島状構造内での光電子強度は場所による変動が激しい。非共鳴条件では同一場所での光電子強度の変動は小さいことから、基板の凹凸が強度変動の原因ではない。島状構造では裸のグラファイト面とナノスケールのルブレンの島があると結論される。光の偏光依存性も分光を再現し、鏡像準位とLnの相互作用を可視化することができた。また、量子化学計算と偏光依存2PPE分光に基づき、Lnは分子のRydberg状態と帰属する論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
グラファイト上のルブレン薄膜を対象として、走査トンネル顕微鏡、低速電子線回折、反射吸収分光なども行った。ルブレンは規則構造を持つ一層膜の島を作るとともに乱雑にも分布することが確かめられたが、この結果はPEEMの結果と良く整合している。また、2PPE-PEEMでの光の偏光依存性から、鏡像準位と分子が相互作用する距離を推定できる可能性を捉えた。グラファイト以外の基板でも同様な強い共鳴励起を探すことを目的としてAu(111)基板上でのルブレンについても、2PPE分光を開始して、被覆率による仕事関数の変化、鏡像準位の変化などを捉えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Au(111)基板上のルブレンに対して、被覆率、励起波長を細かく変えながら、共鳴増大が起こる条件を探索する。これにより分子の非占有準位と鏡像準位の相互作用を制御し、分子の励起効率を向上させる指針を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた試料準備室は今年度は作成せず、他の装置のものを借用して使用した。 試料準備室の部品を消耗品費で購入して使用できるようにする。真空ポンプなどは既存装置からの借用を続けることで予算内に収める。
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