研究課題
本研究では、錯体分子力を用いて、カチオンはカチオン同士で、アニオンはアニオン同士で集積するような異常電荷分離状態をもつナノ構造体の開発について検討した。このようなナノ構造体構築の鍵となるのは、構成単位となるカチオン性あるいはアニオン性金属錯体に超分子相互作用の形成が可能な官能基を複数導入する事である。そこで、平成26年度までに、親水性の配位子として、アミノ基、カルボキシル基、およびチオール基を有する含硫アミノ酸類を、疎水性の配位子として、二座のフォスフィン配位子であるジフェニルフォスフィン類を導入したキラルな金(I)多核錯体を合成した。この金(I)多核錯体と各種金属イオンとの反応により、この種の錯体が第二の金属イオンに配位可能な錯体配位子として機能することを確認した。また、上記の金(I)錯体に含硫アミノ酸部位のキレート配位に有利な金属イオンを反応させ、ある種の無機塩を反応液に添加することにより、水素結合能とπ-π/CH-π相互作用能を併せ持つ両親媒性のキラルな多核金属錯体が単結晶として生成することを見出していた。今年度は、これらのナノ構造体結晶の合成法の確立を行うとともに、各種分析機器を用いて、それらの同定ならびに物性の調査を行った。また、結晶成長の条件の改良により、極めて良好な単結晶を合成し、X線解析により、異常電荷分離ナノ構造体の精密な分子構造を決定した。
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Inorg. Chem.
巻: vol. 54, No.18 ページ: 8881-8883
10.1021/acs.inorg-chem.5b01549