「スピン偏極STMによる単一ナノ分子グラフェンの磁気構造解明」を目指して、自作した300Kと4Kの2台の超高真空・スピン偏極STM(走査トンネル顕微鏡)を用いて研究を進めてきた。 2013-2014年度までに得られた成果を述べる。極限最小素子開発を目指し、最小の分子の一つであるCO単一分子を、STM探針によるマニピュレーション技術を駆使して人工的にナノ分子グラフェンを創成することを目指してきた。Cu(111)を基板として使用した。原子レベルで平坦にすることで、極低温環境下で基板表面には自由電子による干渉パターンが鮮明に確認できた。基板上の残留不純物量は1%以下であることをSTM原子像から確認した。なお残留ガスの半分は既にCO分子であった。STMを5Kに冷やした状態で、超高真空STM解析槽に0.01L程度COガスを導入し、短時間、STM周りの冷却シールドをあけることで単一分子を基板上に僅かに吸着させることに成功した。 吸着したCO単一分子の探針を移動し、電圧パルスおよび接近させることにより、CO分子1個を動かすことに成功した。しかし困難に直面した。1個のCO分子(黒点としてSTM像中で観察される)を別のCO分子に接近させていくとダイマーを形成する。2つの黒点が連なった細長い黒点となる。難しいのは3つ目のCO分子をこのダイマーにもってくる際、針の影響がこのダイマーにおよび、予想以上に正確なカゴメ上に配列することが困難であり、数時間も要する点である。非常に効率が悪いことが分かった。 一方で、1個1個のCO分子をSTM探針で操作するのではなく、0.5MLほどCO分子を吸着することで部分的にCO分子はカゴメ上に配列する(√3x√3R30)ことが分かった。現在、電子状態密度の測定結果と第一原理計算を行っている。
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