平成26年度は前年度までに作製した素子とTHz応答測定系を用いて、THz電磁波を用いた単一電荷・スピン伝導の制御に関する実験を行った。THz光照射のための実験系に改良を加えることで、THz光と量子ドットとの相互作用をこれまで以上に強くすることに成功した。その上で、量子準位間隔や伝導度が制御されたInAs量子ドットトランジスタ素子に微弱な広帯域THz光を照射した結果、量子ドット中の単一電荷のサブバンド間遷移に起因する電子のトンネル伝導が観測された。その際のトンネル電流をスペクトル解析することで、世界で初めて単一量子ドットのTHz分光に成功した。以上の成果は、フォノンラビ振動の観測などのTHz光の量子情報分野への応用に道を拓くものである。今後は、より高出力なTHz光源の開発を進めるとともに、素子として位置や形状を制御した量子ドット素子を用いることで、本研究をさらに発展させたいと考えている。
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