研究課題/領域番号 |
25600014
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安武 裕輔 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10526726)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / 室温スピン注入 / 伸張歪み |
研究概要 |
本研究では、シリコン基板上の伸張歪みゲルマニウム量子構造を対象として、共鳴励起・ホットエレクトロン励起を利用し、室温生存可能なLandau準位を基本とした、室温動作ランダウ量子振動素子(スピンフィルタ、波長多重円偏光光源、量子標準素子)を創製することを目的としている。 本年度は、超高真空固体ソース分子線エピタキシ装置を用いて、シリコン基板上伸張歪ゲルマニウム薄膜の作製方法の確立を行い、室温において伸張歪ゲルマニウムの直接遷移端における光学的スピン注入と検出に初めて成功した。これは結晶成長中に導入される結晶欠陥由来の非発光中心が再結合寿命の比較的長いゲルマニウム間接遷移端由来蛍光を抑制し、サブナノ秒程度の再結合寿命を有するゲルマニウムの直接遷移端由来蛍光のみが観察される自然発生的な再結合寿命ゲーティング効果に起因したものである。ゲーティング効果の実証のため、バルクゲルマニウムにおける時間相関単一光子計数法による時間分解円偏光フォトルミネッセンスの時間―波長領域フルマップ測定から、0.5ns幅のゲーティングを適用することで、バルクゲルマニウムの直接遷移端においても室温で光学的スピン注入と検出に初めて成功した。 ゲルマニウム基板上に形成したType-1ゲルマニウム多重量子井戸の直接遷移端において、375Kの高温においても明瞭な光学的スピン注入に成功し、また低温領域において間接遷移端への光学的スピン注入にも初めて成功した。間接遷移端において観察された正の円偏光度は直接遷移端に注入されたHH由来の電子スピンがバレー散乱において間接遷移端にスピン情報を保持したまま注入された可能性を示唆しており、バレー散乱を用いたスピンフィルタ効果の重要な証左である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲルマニウムの直接遷移端を利用した新規スピン機能素子の創製を目的とし、シリコン基板上ゲルマニウムの結晶成長技術、またゲルマニウム量子構造、伸張歪ゲルマニウムへの室温光スピン注入に成功している。磁場中円偏光分解フォトルミネッセンスからも各試料において明瞭な室温ランダウ準位が観察されており、当初の予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
室温零磁場環境においてゲルマニウム量子構造、伸張歪ゲルマニウムへの光学的スピン注入に成功し、基盤的な技術・情報は得られている。今後は当初の予定通り、磁場環境中においてゲルマニウムにおいて発現するランダウ準位に起因する室温量子振動を利用した新規デバイスの実証を行う。具体的には円偏光エレクトロルミネッセンスによる非磁性または磁性電極から伸張歪ゲルマニウムへの電子スピン注入実証、磁場中時間分解円偏光フォトルミネッセンス・エレクトロルミネッセンスによるスピン緩和機構とバレー間散乱との相関評価とスピンフィルタリングの実証を行い、具体的な量子デバイスの提案・実証を行う。
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