研究課題/領域番号 |
25600019
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松尾 保孝 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90374652)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | プラズモン / 窒化物 / 電場増強 |
研究概要 |
本研究の目的はチタン窒化物のナノ構造を微細加工技術によって作製し、新しい可視光域のプラズモニックデバイスを創製することにある。これまで可視光域のプラズモンに関する研究は金や銀といった貴金属で行われてきたが負の誘電率によるロスなどの問題点も生じていた。そこで可視光域にプラズモンを有すると考えられるTiNナノ構造の作製方法の確立と、TiN結晶構造やナノ構造と局在表面プラズモン特性の相関、TiNナノ構造によるプラズモン電場増強効果などの光機能を明らかにし、新しい可視光域のプラズモニックデバイス創製を目指す。 H25年度の実施計画として、イオンビーム(Arイオン)を照射することでターゲット材料をスパッタリングし、基板表面に薄膜を作製することが可能なイオンビームスパッタ装置を用いてTiN薄膜作製を行った。ターゲット材としてTiを用い、真空チャンバー内にはイオンビームを発生させるためのArガス、薄膜に窒素(N)をドープするための窒素ガスを導入して成膜を行った。ArとNの混合比率やArイオンを生成するプラズマ出力を調整し、Tiターゲットをスパッタして窒素と反応させることによりSi基板上にTiN成膜を行った。成膜された基板は少し赤みを持つ金色を呈していた。X線光電子分光装置(XPS)を用いてTiとNの組成比、結合状態についての分析を行った結果、TiとNのピークが検出されTiNが成膜されていることがわかった。しかしながらTiのピークは非常にブロードであり、TiNはアモルファス状態と予想される。 もう一つの課題として、電子線描画装置で作製した100nm程度の円形構造にイオンビームスパッタ成膜を行い、リフトオフ法によりTiNナノ構造が作製できるかを試みた。その結果、必要なサイズのTiNナノ構造の作製が確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度に計画していたイオンビームスパッタ装置によるTiN成膜により、一定レベルの薄膜作製が確認できた。また、イオンビームスパッタと電子線描画装置を用いたナノ構造作製によりTiNナノ構造作製にも成功している。作製した薄膜の物性分析も進んでおり、当初予定していた装置群を活用することにより目的とするTiNの光機能分析を実施できる基板の作製に成功している。このことから研究進捗においてはおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
H26年度は当初計画にそって以下の内容で進める。 <TiNナノギャップ構造の作製>TiNナノ構造が5~10nm程度のギャップをもって並列している構造を作製する。作製する形状としては電場増強が非常に強く起こる構造として知られているボウタイ(Bowtie:三角形が向かい合った構造)構造や正方形を二つ近接させたブロックダイマー構造などの作製を行う。基本的には電子線描画装置とドライエッチングの条件を調整して作製を行う。 <表面増強ラマン散乱(SERS)測定によるプラズモン増強の解析>上記の方法で作製したTiNナノギャップ構造の上にローダミンやピリジンなどの表面増強ラマン散乱が観測される分子を含む溶液を滴下し、ラマン散乱光の測定を行う。ギャップ間隔、分子濃度、レーザー光強度などを変化させ、通常のラマン散乱光強度と比較することによりTiNナノ構造のギャップ間に生じる電場増強度に関しての情報を得る。また、薄膜での光学定数を元にTiNナノギャップ構造に励起光が入射した場合の電場強度分布について有限要素差分法(FDTD法)による電磁界シミュレーションを行い、理論面と実験データとの比較検討も行う。さらに研究の進捗状況によっては金とTiNを積層したナノ構造作製を行い、Au-TiN複合構造のプラズモン特性についての検証も行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
3月発注分の支払いが4月になっているため 既に3月発注分については3月中に納品され、年度内執行されている。
|