研究課題/領域番号 |
25600020
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90254143)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | リン / ポリアニリン / ジアリールホスフィン / ブロモ基 / ターフェニル / 合成中間体 / 光分解 |
研究概要 |
立体混雑したリン版ポリアニリン合成における重要な鍵合成中間体となることが期待できる「芳香環上に容易に官能基導入が可能であるジアリールホスフィン誘導体」の合成を検討した。まず、2-ヨード-1,3,5-トリブロモベンゼンとアリールGrignard試剤との反応により進行する2回の連続したベンザインの生成及びアリールGrignard試剤の付加を経由して得られる4-ブロモ-2,6-ジアリールフェニルGrignard試剤をヨウ素で捕捉することにより2,6位にアリール基を有する4-ブロモヨードベンゼン誘導体を合成した。次に、ヨウ素を選択的にハロゲン-メタル交換し三塩化リンと反応させることによりリン原子上には2つの嵩高いm-ターフェニル型置換基が置換し、更にm-ターフェニル型置換基上にはリン原子の4位にブロモ基が置換した立体混雑したジアリールクロロホスフィンを合成することが出来た。特にアリール基として4-t-ブチルフェニル基を用いることにより遠隔からリン原子周辺を覆うことができた。更に対応するトリアリールホスフィンへと誘導し、その構造をX線結晶構造解析により明らかにした。これに関しては既に投稿、受理され2014年度中に発表予定である。一方、4位に電子吸引基を有する立体混雑したトリアリールホスフィンの光化学の研究過程において、いくつかの誘導体では近紫外から可視光の照射により効率良くリン-炭素結合が切断され低濃度では主にジアリールホスフィンが生成することを見出した。この反応は安定な前駆体からの立体混雑したリン版ポリアニリン合成における鍵反応として用いることが出来る可能性があり、立体混雑したトリアリールホスフィンがリン版ポリアニリンの前駆体と成りうることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いるジアリールクロロホスフィン等の合成中間体は、立体混雑したトリアリールホスフィン等の多様な興味深い化合物へと誘導することが出来、更にホスフィニルラジカル等の興味深い反応中間体の前駆体と成るものも多い。また、合成的な可能性や反応性を明らかにすることは該当する合成中間体の実践的な大きさや有用性を見積もることにつながる。このような検討を並行しながら研究を進めた結果、結果的に研究上の寄り道が多くなり研究の進行が遅れた。また、技術的な面では、今回合成した置換基の収率が低かったこと、ジアリールクロロホスフィン類の精製時の加水分解に対する安定性がまちまちであり精製法が現時点では化合物に依存していること、元素分析レベルでの精製が難しいものがあった事等が障害であり、今後の検討で改善して行く必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は前年度に得られた知見を更に発展させることにより研究を進める。すなわち、現在までに得られた合成中間体、2,6-ジアリール-4-ブロモヨードベンゼン及び2,6-ジアルキル-4-ブロモヨードベンゼン、更にはそれらより導かれる立体混雑したジアリールクロロホスフィンからのリン版ポリアニリン及びそのオリゴマーの合成を検討する。上記合成中間体のブロモ基を1)ハロゲン‐メタル交換及び引き続く求核置換又は付加反応、或いは2)遷移金属錯体触媒を用いたアミノ化等の反応により、リン、或いは窒素へと置換することによりリン版ポリアニリン骨格を構築し、更にヘテロ原子上の還元等を行うことにより目的の化合物の合成を検討する。リン及び窒素官能基が不都合な反応をしない温和な反応条件、合成経路、リン及び窒素官能基の選択を見出すことが課題になると考えている。また平成25年度に得られた知見からは立体混雑したトリアリールホスフィンをポリアニリン等の高分子骨格に組み込み光分解することによってもリン版ポリアニリン相当の化合物が合成できる可能性が示唆された。これについても、現在までに開発した立体混雑したトリアリールホスフィン及びその誘導体の合成手法を駆使し、導電性高分子骨格に組み込んだ立体混雑したトリアリールホスフィンの合成及びその光反応性を検討する。ポリアニリンを始めとする導電性高分子の多くは、本質的には酸化還元等されやすい化合物であり、多角的なキャラクタリゼーションにより構造や性質が検討される。本研究でもこれを念頭に置き、生成物に対し、いわゆる有機化学的な分析手段で合成の成否を決定するだけではなく、多角的な測定を行いリン版ポリアニリンの構造、性質の一端を明らかにすることを目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
|