研究課題/領域番号 |
25600021
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 千歳科学技術大学 |
研究代表者 |
平井 悠司 千歳科学技術大学, 総合光科学部, 講師 (30598272)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | プラストロン / 自己組織化 / ハニカム状多孔質膜 / 酸素補給 |
研究概要 |
本年度は(1) 酸素補給機能測定用実験系の構築、(2) 加硫による微細構造の耐久性向上、の2項目に付いて研究を進めた。 実験系の構築に関しては概ね終了した。水中に沈める箱としては、プラスチック製の遠沈管を利用した。遠沈管本体の側面に超音波カッターで穴をあけ、その穴を塞ぐようにプラストロン模倣材料を接着剤で貼付けた。また、遠沈管の蓋に酸素濃度計のセンサーを取り付けることでプラストロン模倣材料が付いた遠沈管本体を簡便に取り替えられ、実験がスムーズに進むようにした。酸素吸収剤としては空気亜鉛電池を用い、密閉系では十分に酸素が消費され、酸素濃度が0%になることも確認された。よって、後はプラストロン模倣材料を作製し、遠沈管に貼付けて水中に沈め、酸素補給能力の測定を行うだけである。 当初の予定ではハニカム状多孔質膜の上層のピラー構造化膜をプラストロン模倣材料として利用することを考えていたが、アスペクト比が低く、十分な撥水性を示さず(空孔が空いていることで浸透してしまう)、また、非常に薄い膜で構成されているので、どのように加工しても水圧に耐えるのは困難だと思われた。また、加硫実験に関しては未だ十分な知見が得られず、今後も時間がかかることが予想されたので、現状で購入可能かつ疎水性、また耐久性もある高分子であるポリカーボネートの利用を試みた。ポリカーボネートで上下に穴が貫通したハニカム状多孔質膜を作製し、この膜を水に沈めてその耐久性を確認したところ、1.5 cmの直径の穴にセルフスタンドで貼付けた膜であるにもかかわらず、数センチまでの水圧に耐えられることが確認された。また撥水性としてはそれほど高くないが、水の侵入は防げることも同時に確認された。よって、今後はこのポリカーボネートで作製した上下に穴が貫通しているハニカム状多孔質膜をプラストロン模倣材料として利用して行くこととした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年4月に所属先を変わり、研究室の立ち上げに時間を要してしまったために多少研究できる時間が減ってしまったが、実験系はほぼ確立しており、また耐久性超撥水性材料としても、超撥水性は示さないがポリカーボネート樹脂で作製した貫通型のハニカム状多孔質膜は十分な空孔を有していながらも内部への水の侵入を防ぎ、かつ水圧に耐えうる十分な耐久性を有していることが確認され、プラストロン模倣材料として使用できることが明らかとなった。今後は基本的に酸素補給能力の測定を行うとともに、単位面積辺りの酸素補給能力の計算や、更なるデバイスの設計を試みる。また、データも出始めているので、今後は積極的に学会や論文等で発表をして行く予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究により、プラストロン模倣材料の選定と実験系の構築はすでにほぼ完了している。そこで今後はプラストロンとしての酸素補給能力の性能評価を中心に行いつつ、その効率の向上を目指してプラストロン模倣デバイスの開発にも着手する。特に性能評価に関しては、単位面積辺りの酸素補給能力の計算もさることながら、水温や塩濃度、溶存酸素濃度を変えて測定を行うことで、どのような環境下でどの程度の酸素補給能力が有るのかも調査する。微細構造の耐久性に関しては現状でもそれほど問題にはならないが、深海などの高水圧下での使用を考えた場合は不十分なので、今後も平成25年度に引き続き加硫による耐久性の向上も進めて行く予定である。 デバイスの構築に関してはパンチングメッシュなどを支持材として利用し、その表面にプラストロン模倣材料を貼付ける。これらの構造体を複数枚スタックさせたりバンドル化させることで酸素を補給することができる表面積を増やしたり、その表面を水が流れるような装置を組み込むことで酸素補給能力の向上に努める。また海中で使用する燃料電池の構造も勘案し、空気がデバイスの内部で循環するようなプラストロン模倣デバイスを作製し、海中で使用する燃料電池などへの搭載を目指す。また、今後は得られたデータを積極的に学会や論文として発表して行く。特に海洋系の装置を研究している研究者との連携を目指して異分野の学会にも参加するつもりである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験で使用する溶存酸素計の選定、購入に手間取り、年度内の使用は間に合わなかったため今年度に繰り越した。 すでに溶存酸素計に関しては発注済みであり、すぐに使用する予定である。
|