研究課題/領域番号 |
25600023
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉江 尚子 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20224678)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポリマーブレンド / ナノ相分離構造 / エピタキシャル結晶化 / 固液相分離 |
研究概要 |
本研究は申請者らが開発した、ポリマーブレンド薄膜におけるナノ周期構造造形技術を基盤に、nm スケールのドナー/アクセプター構造を造形することを目的とする。この技術は有機低分子溶媒の配向結晶化をきっかけとして、ポリマーブレンドの固液相分離と、一方のブレンド成分である結晶性ポリマーのエピタキシャル結晶化を引き起こしている。素早い固化(結晶化)により固液相分離の極めて初期の段階で構造凍結をすることにより、nmスケールの相分離構造を実現可能にしている。本年度は、まず、立体規則性ポリ(3-ヘキシルチオフェン) [rrP3HT]とフェニル-C61-酪酸メチル[PCBM]の混合系に対して本造形技術を適用したが、残念ながら目的とする構造体は得られなかった。そこで、rrP3HT/ポリスチレン[PS]、及び、rrP3HT/立体不規則性ポリ(3-ドデシルチオフェン)[ranP3DDT]の各ブレンドについて試みたところ、トリクロロベンゼンを結晶溶媒として用いた場合にストライプ状のナノ相分離構造を生成することに成功した。rrP3HT/PS系では、原子間力顕微鏡観測により、明瞭な境界により区切られた相分離構造が確認された。周期は200nm程度であり、ブレンドの混合比によりある程度制御可能である。微小角入射広角X線回折測定および偏光紫外可視吸収スペクトル測定より、P3HT結晶のa軸が基盤に対して垂直に配列し、c軸がラメラ構造に対して平行に配向していることが明らかとなった。rrP3HT/ranP3DDT系でも同様の相分離構造が観測されたが、相間の境界は不明瞭で、ストライプ状の層内にも第2成分が侵入している様子が観測された。2つのブレンドの相分離構造の違いは相溶性の差に由来するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
rrP3HTとPCBMの混合系ではナノ相分離体を形成することはできなかったが、これは計画当初から予想された通りの結果である。そこで、計画の次の段階、すなわち、rrP3HTと第2の高分子成分ブレンドへと研究を進めた。この結果、rrP3HT/ranP3DDTとrrP3HT/PSでナノ周期構造を得ることに成功しており、当初の計画通りに研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
rrP3HT/ranP3DDTとrrP3HT/PSでナノ相分離構造体の形成に成功したが、深さ方向の成分分布状況が不明であるため、まず、この解析を進める。その後、ナノ相分離したrrP3HT/ranP3DDTとrrP3HT/PSに対してアクセプター分子を添加することを検討する。前者については、rrP3HTとranP3DDTの相間にアクセプター分子が凝集すること、あるいは、低結晶性のranP3DDT相中にPCBM の凝集相が形成することを期待している。後者ではPS相を選択除去後にアクセプター分子を添加し、P3HT/アクセプターの2 元ナノ相分離構造を得ることも検討する。
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