研究課題/領域番号 |
25600029
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
部家 彰 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80418871)
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研究分担者 |
松尾 直人 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10263790)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | グラフェン / 触媒レス / ナノリボン / 分解 / 分解種 / 気相重合 |
研究概要 |
本研究の目的はガラス基板上に触媒なしで直接グラフェン膜を大面積堆積するホットメッシュ堆積(HMD)法を提案し、ペンタセンの分解反応・気相重合反応を検討すると共に本手法によりグラフェン/ペンタセン積層構造を作製しそのキャリア移動機構を解明することである。 H25年度は金属上でのペンタセンの分解反応を明らかにし、分解種の気相重合反応を制御することを検討した。 ①ペンタセン分解種が気相中でどのように重合反応するかを調べるため、新たにペンタセンの供給・分解機構を作製し、基板との距離を10~700mmの範囲で制御できるよう、既存装置の改造を行った。 ②分解種のメッシュ温度依存性の検討し、メッシュ温度が1300℃で分解するが、その温度より低くてもペンタセン膜の結晶構造が変化することを明らかとした。1400℃でペンタセン分子を分解し、その堆積前駆体を用いて形成した有機膜のシート抵抗を測定した結果、ペンタセン膜に比べて、6桁高い抵抗値を示した。GC/MS測定の結果からこの膜の主な分子はジヒドロペンタセンであり、グラフェンの形成には至らず、成膜条件の検討が必要であった。また、ペンタセン膜に原子状水素を吹き付けた場合、メッシュ温度1400℃ではペンタセン膜に変化は見られず、ペンタセンの分解は主にWメッシュ上で起こっていることが確認された。さらに、H2ガスの代わりにHeガスを用いた場合、メッシュ温度1400℃の高温でもペンタセンの分解は起こらなかった。 ③グラフェンナノリボンが形成される成膜条件の簡単な見積りを行った。気相重合反応率を0.001%と仮定し、メッシュと基板との距離300mmのとき、成膜時のガス圧の最適値を求めた結果、長さ1umのアームチェア型およびジグザグ型ナノグラフェンで67Paおよび40Paと見積もられた。今後はこの条件を用いて成膜条件の最適化を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では触媒体の材質および表面形状を検討することになっていたが、予算が枯渇し、25年度では検討することができなかった。しかし、主な計画である装置の改造とそれを用いた有機膜の形成に成功しており、今後、成膜条件の最適化を行う予定である。 これまでの検討結果を学術論文に2件投稿し、内1件はすでに掲載済みである。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度に検討できなかった分解種のメッシュ表面ナノ構造および金属材質依存性の検討を行う。その結果も踏まえて、グラフェン膜の形成を行う。 さらにペンタセンとグラフェンシートもしくはグラフェンナノリボンを用いた新規デバイスを作製しその電気特性から質量0の相対論的粒子から有効質量を持つ系への分散曲線間および実空間での移動ダイナミックスについて検討する。
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