研究課題/領域番号 |
25600030
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
河合 武司 東京理科大学, 工学部, 教授 (10224718)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノワイヤー / ソフトテンプレート / パラジウム |
研究概要 |
本研究の目的は、C18AAの分子集合体をソフトテンプレートとしてPdナノリングを作製することとその最適条件を明らかにすることである。さらに、ナノリングの成長機構、Pd以外の貴金属・合金ナノリングの作製法の確立、およびそれらの触媒機能を解明するである。本年度は、C18AAの分子集合体に及ぼすC18AAの濃度、トルエンの可溶量、有機溶媒の種類および塩化パラジウム酸カリウムの濃度(電解質の効果)などの影響を調べ、Pdナノリング作製の最適条件を調べた。その結果、[K2PdCl4]=7.5μmol, [C18AA] / [K2PdCl4]=2, [NaBH4] / [K2PdCl4]=10およびトルエンの添加量が7 µLの条件が、Pdナノリング集合体作製の最適条件であることを明らかとした。さらに、トルエンの添加量によって球状ナノ粒子や分岐状ナノワイヤーなどの構造体が作製でき、数種類の構造体を容易に作り分けることにも成功した。また、トルエンなどの油を可溶化させたC18AAのTEM観察から、水溶液中で芋虫状の剛直な分子集合体を確認し、ソフトテンプレートの存在を実証した。また高分解TEM観察から、ナノリングの成長方向には0.227 nm間隔のフリンジと多数の粒界が観測された。0.227 nmはPdの(111)面と一致することから、C18AAが(111)面以外の結晶面、例えば(100)面や(110)面に選択的に吸着することによってナノリングが成長することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1) Pd ナノリングの作製に成功したこと、(2)ナノリング作製の最適条件を解明したこと、(3)ナノリングのソフトテンプレートを実証したこと、さらに(4)ナノリングの結晶の成長方向を明らかとしたことから、本研究の最終目標のほぼ半分は達成できた。また、(3)のソフトテンプレートが実証できたことは、Pd以外の貴金属や合金のナノリング作製の可能性がたいへん高まったことを示している。さらに、ナノリング生成機構の解明に重要な(4)の結晶成長に関する情報が明らかとなったことは、大いに評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
Pdナノリングの生成は、C18AAの末端アミン基がパラジウムに吸着していると考えられる。したがって、基質としてはアミン基に吸着能がある物質を選ぶことが重要である。アミン基は比較的多くの金属に配位する能力を有していることが知られているので、様々な貴金属および金属のリング作製を試みる。また得られたナノリングの耐溶媒性、耐熱性、耐酸性・塩基性などの耐環境安定を評価し、p-Nitrophenolの水素化反応に対する触媒能を調べ、ナノ粒子との触媒活性を比較する。 さらに、以下の項目についても挑戦する。 (1) TEMの時間変化から生成機構の解明 (2)海島構造のナノリングの作製 (3)ナノリング集合体内の構造解明とナノリアクターとしての応用
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品などの物品費や英語論文校閲費などの謝金費のほとんどが学内予算で賄うことができたため。 予算は主に、豊富なナノ材料や界面化学の知識や実験技法、さらに電子顕微鏡観察の特殊観察技術を持ったPD(土屋好司博士)の雇用に使用する。 最近、ナノ材料の合成研究分野は加速度的に発展し競争が激しいため、昨年度までに得られた成果(ナノリング合成の最適化およびソフトテンプレートの実証)を早急に論文等に纏める必要がある。論文に纏めにはTEM観察による生成機構の解明が不可欠である。そこで、短期間のうちに論文作成・投稿を完了させるために、TEM技能とナノ材料の知識の豊富なPDを雇用する。
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