本研究は、1ミクロン以下の微細気泡(NB)の産業利用のために、NBが充分な寿命を持っていることを確認し、その寿命を延ばす要因をNBとその周囲の溶質の物性計測と形態学的観察から明らかにすることを目的とする。平成26年度は、前年度の計測を引き続き行うとともに、NaCl水溶液を用いてNBの寿命に対する添加物の影響を評価した。 酸素NBを10mMまたは100mMのNaCl水溶液中で調整し、0~21日後にサンプリングし、凍結割断レプリカ法を用いて電子顕微鏡観測した結果、時間がたつにつれNB数が減少して大きくなった。ただし単調減少ではなく、調整後1~2日におけるNBが最も多く小さいことがわかった。そしてその時のNB数密度は、NaClを10mM含有した水溶液中で最も多く、NaCl含有量が増えると減少した。また1週間以上保管したNBの表層に、10nm以下厚さの境界層が形成されていた。以上よりNaClが少量含まれている場合、気泡周辺に添加物が濃集して境界層を作り、気泡を安定化させる可能性が示唆された。しかしその電解質濃度が高すぎると、気泡表面層のζポテンシャルを打ち消してしまい、気泡同士の合着を促進させて消滅を早める効果があるのではないかと考えられた。 気泡の安定性や水溶液中での気体濃度を求めるにも重要であるNBの内圧を実測するため、Raman分光法を用いた新規のNB中気体分子の測定法を開発した。またRaman装置上でNB含有水溶液を調整して測定するために、ガスハイドレートを溶解させて調整する新規NB含有水調整法を開発した。そしてメタンハイドレート分解水のRaman測定を行った結果、メタンNB(平均径:約500nm)中の内圧は約7MPaであると計測された。 以上のように得られた結果を元に、NBの水溶液中での安定化メカニズムを考察し、安定化技術を提案した。
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