高飽和磁束密度(Bs)を発現し得るFe濃度85at%近傍のFeSiBPCu合金で、尚且つ、熱処理による結晶化で均質なナノ結晶組織を得るために、ヘテロアモルファス構造を有する組成選択が必要である。昨年度までにFe元素の一部をPt元素に置換した新たな合金組成について組成探査を行った結果、Fe75.3Pt8B12P4Cu0.7組成において安定的にアモルファスリボンの作製が可能であることが明らかとなったため、今年度はこれらの組成の熱処理による内部構造の変化および磁気特性の変化について詳細に調査を行った。As-QでのFe75.3Pt8B12P4Cu0.7リボンは、アモルファス単相であることがXRDにより確認されたが、400~500℃における熱処理ではアモルファス相中に多数のナノ結晶(α-Fe)が析出することが明らかとなった。さらに520℃近傍からはL10 FePt相が出現し始めることが確認され、TEMを用いて詳細に観察を行った結果、適度な熱処理を行うことにより、ナノ結晶軟磁性相(α-Fe相)と硬磁性相(L10 FePt相)が均一な混相状態となっていることが確認された。このナノ複合組織に由来して超軟磁性から半硬磁性に磁気特性を変化させることが可能であり、飽和磁束密度Bs(≈Ms)を低下させることなく、保磁力を約103倍にまで増加させることが可能であることをVSMにより確認した。これらの一連の実験により新規な磁気交換カップリング磁石が作製できる可能性を明らかにした。
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