研究課題/領域番号 |
25600041
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 光 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (90195800)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シリコンナノパーティクル / フォトルミネセンス / 粒径制御 / HCN水溶液 / 太陽電池 / 洗浄 / 量子サイズ効果 |
研究概要 |
シリコン切粉を原料とし、ビーズミル粉砕法と光化学的溶解法と組合せ、青色および緑色の発光をするシリコンナノパーティクルの作製に成功した。ビーズミル粉砕後でも、シリコンナノパーティクルのX線回折スペクトルでシリコン結晶構造由来のピークが観測され、結晶状態を保っていることが分かった。このピーク形状より、シリコンナノパーティクルの最大分布粒径は、体積分布でも3~5nmであり、ほとんどのシリコンナノパーティクルの粒径が10 nm以下であることも分かった。これは、透過電子顕微鏡像の結果と一致した。 緑色発光を示すシリコンナノパーティクルのフォトルミネッセンス(PL)の波長は、入射光エネルギーの増加に伴い、高エネルギー側にシフトした。これは、種々のサイズのシリコンナノパーティクルが存在し、量子サイズ効果による種々のバンドギャップを反映するためと考えられる。 エッチング性のあるHCN水溶液を用いて、シリコンナノパーティクルに含まれているCuやZn等の金属汚染を、全反射蛍光X線分光装置の検出限界である~3×10の9乗原子/cm2まで除去できた。 シリコンナノパーティクルを用いた太陽電池の作製も行った。n型Si(100)基板上にp型シリコンナノパーティクル分散液を滴下し、表面に櫛形アルミニウム電極を形成し、窒素中650℃で加熱した後、裏面全面にアルミニウム電極を蒸着して作製した。光照射せずに電流―電圧特性を測定すると整流性が見られ、pn接合が形成されていることが分かった。また、シリコンナノパーティクル塗布後にシリコンナノパーティクル表面を硝酸酸化し、アニールすることにより、シリコンナノパーティクル同士の接触がよくなるが、68wt%硝酸を滴下し、加熱蒸発させ、硝酸酸化するプロセスが最適であることが分かり、理想係数を2.7から1.7へ低減できた。また、光照射することにより、光起電力効果も大きく向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究遂行上最も重要な要素技術は、シリコン切粉からシリコンナノパーティクルを創製する技術である。これまでの研究で、ビーズミル粉砕法と光化学的溶解法の組み合わせにより、青色及び緑色の発光をするシリコンナノパーティクルの作製に成功した。すなわち、数nmの粒子サイズのシリコンナノパーティクルの創製を達成した。また、エッチング性を付与したHCN水溶液を用いて、シリコン試料に含まれているCuやZn等の金属汚染を、全反射蛍光X線分光装置の検出限界である~3×10の9乗原子/cm2以下にまで除去できることを見出した。これらの成果は、平成25年8月までに達成することができた。 さらに、平成25年度後半では、平成26年度に計画していたシリコンナノパーティクルの電気的接触達成技術の開発を前倒して遂行し、シリコンナノパーティクルの硝酸酸化プロセスの最適化まで終了した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に先行開発した硝酸酸化法によるシリコンナノパーティクル同士の電気的接触形成技術を用いて、シリコンナノパーティクルのみを用いて太陽電池を作製する。これを実現するために、まずは、pn接合形成技術の開発とシリコンナノパーティクル上の電極の検討を行い、シリコンナノパーティクル/結晶シリコン多接合型太陽電池を創製する。特に、シリコンナノパーティクルのドーパント密度の最適条件を探索する。ドーピングの手法としては、気相拡散法、塗布型ドーパント溶液を用いた固相拡散法、また、シランの熱分解により形成したハイドープシリコンナノパーティクルの利用などを検討する。シリコンナノパーティクル間の良好な電気的接触を保ちつつ、シリコンナノパーティクルのみを用いたpn接合を形成する方法を開発する。 さらに、シリコンナノパーティクル上の電極材料及び電極構造を検討する。櫛形電極では、横方向の抵抗が大きく、エネルギー変換効率が向上しないので、透明電極の利用を検討する。この透明電極材料としてITOや安価なZnOなどを試験する。形成方法として、スパッタリング法、安価なスプレー法、スピンコート法などを検討する。また、裏面の金属電極の材質や焼成温度などの形成条件についても、最適化を行う。 最終的には、結晶シリコンpn接合太陽電池上にシリコンナノパーティクルを用いてpn接合を形成し、多接合型太陽電池の作製を試みる。硝酸酸化法と欠陥消滅型洗浄法を用いて、界面準位密度を低減したり、金属汚染を除去することにより、再結合中心を低減し、エネルギー変換効率の向上を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ計画通り使用し、消耗品の割引などにより、わずかに予算が余った。 次年度の消耗品費として使用する予定である。
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